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米中間選挙、民主党に神風は吹くか? 「前哨戦」を読み解く

1992「女性の年」の再現なるか

アメリカ議会上院は10月6日、トランプ大統領が指名した最高裁判事の人事を承認し、ブレット・カバノー判事が就任した。

性的暴行疑惑を抱えていたカバノー判事に対しては、民主党が「何がなんでも阻止」の姿勢の一方、対する共和党では、支持基盤のキリスト教保守が悲願とする人工妊娠中絶非合法化に欠かせない判事として「守り抜け」の号令がかかっていた。

ブレット・カバノーとトランプ大統領最高裁判事に就任したブレット・カバノー氏とトランプ大統領〔PHOTO〕gettyimages

暴行疑惑の真相の如何にかかわらず、民主党議員と共和党議員のほとんどの賛否は実のところ政治的な立場を反映して固まっていた。

中間選挙前に民主党が出端をくじかれた格好だが、1991年に起きたある事件との類似性から、カバノー判事就任が選挙で民主党に神風を吹かせるとの見方も一部にある。

熾烈を極めた上院の承認票読みと中間選挙への影響について、ワシントンで一連の過程を観察した筆者が、両党の内部の声を手がかりに読み解く。

 

中道派が握るキャスティング・ボート

分極化の度合いを強めるアメリカ議会では、中道派の中のごく僅かな議員がが決定的な票になる。

カバノー承認をめぐる最後の「未決定」上院議員はスーザン・コリンズ(共和)、リサ・マコウスキー(共和)、ジェフ・フレーク(共和)、ジョー・マンチン(民主)の4人だった。

彼らは意思決定について一定の連絡はとりあっていたとされる。上院民主党は態度保留のマンチン以外は一致結束で、中道共和党議員3人の取り込みが鍵だった。

それだけに、民主党にとって最もショックだったのは、女性のコリンズの賛成だった。賛成理由は、性的暴行を告発したフォード教授の主張に弱点と矛盾を認めたことだった。

スーザン・コリンズ共和党のスーザン・コリンズ議員〔PHOTO〕gettyimages

米連邦議会上院の役割は裁判ではなく、刑事訴訟での証拠の基準は適用されない。コリンズが重視したのは、どちらの言い分が妥当か、だった。アメリカの民事訴訟で用いられる「証拠の優越」基準である。

アメリカの政党には党議拘束がない。政治家は自分の再選、信念、党内情勢を天秤にかけて判断する。

コリンズは典型的な「ニューイングランド・リパブリカン」(東部穏健共和党)で、南部民主党議員よりはるかにリベラルで、共和党内では造反票の常連だ。

コリンズは党内でカバノー承認賛成に強いプレッシャーを受けていたが、選挙区のメーン州自体はリベラルで決断の幅はあった。当選3回で過去の選挙でも辛勝は少なく地盤は堅固である。

2020年に改選を迎えるコリンズは、2年後にはカバノー騒動は落ち着いていると見積もったようだが、早くも民主党が落選運動を呼びかけている。