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注目の次世代技術「デジタルツイン」で都市が丸々バーチャル化する日

VR + IoT + 5G = ?

単なるヴァーチャルシミュレーションとは違う

風洞(ふうどう)と呼ばれる実験装置がある。テレビ等でときおり紹介されるが、大きな筒状の装置で、その中に空気の流れ、つまり風を起こすことができる。

ここに飛行機や自動車、建物などのミニチュアを入れ、風を送る。そしてミニチュアにどのような影響が出るか、あるいはミニチュアの周囲の空気はどのように動くかを観測することで、実物をつくったときにどうなるかをシミュレーションするわけだ。

同じように水槽に波を起こして、船などを開発する際の実験を行うための「造波装置」もある。

風洞は製品テストなどに使われる

こうした装置は製品の設計やテストを行う際に欠かせないものだが、誰でも簡単に利用できるわけではない。

当然ながらある程度の大きさになるため、設置したり動かしたりするためには、それなりのスペースとコストが必要になる。また精巧なミニチュアをつくる時間や、装置が使えるのを待つ時間などがかかり、好きな時間にいつでも使えるわけではない。

デジタル技術を活用することで、これらの問題を解決できないだろうか?

実は以前から、風洞のような「物理的な世界=フィジカル空間」で実験を行うのではなく、コンピューターの中に「仮想の世界=バーチャル空間」をつくり、そこで実験を行うという取り組みが行われてきた。

これはCAE(Computer Aided Engineering、コンピューターによる設計支援)と呼ばれる技術。CAEならばいつでも実験可能で、コストや時間も大幅に削減することができ、バーチャル空間であれば、雨や風も思いのままだ。

こうしたバーチャルなシミュレーションをさらに発展させ、より高度で多様な活用ができないだろうか――そんな考えから生まれた新たなキーワードが「デジタルツイン」である。

 

「デジタルの双子」がもたらすメリット

「ツイン」は英語で双子を意味する。したがってデジタルツインは「デジタルの双子」という意味になる。

要はフィジカル空間にある本物の機器、設備、建物などからできるだけ多くのデータを収集し、そっくりそのままバーチャル空間内に再現してしまおうというアイデアだ。

そうして生み出された「デジタル情報による双子」が、デジタルツインというわけである(ちなみにこの言葉は、デジタル技術の世界ではお馴染みのDARPA「米国防高等研究計画局」がつくった造語だ)。

デジタルツインの用途は多岐にわたる。まずは前述のような、製品開発での活用だ。

実際にフィジカル空間で使用されている製品データを集めることで、現実にある製品は周囲からどのような影響を受けるのかを把握できる。そのデータに基づいてバーチャル空間を構築し、たとえばその中で部品の形状を変更してみたりすることで、より良いデザインを検討するのだ。

たとえばGEでは、自社で製造するジェットエンジンに200ものセンサーを設置して、稼働中の(もちろん飛行中も含まれる)エンジンの状態を逐一把握している。

そこから得られるデータを、より効率や安全性の高いエンジンの設計に役立てている。また同じデータを活用して、風や雨といった気象状況だけでなく、いわゆる「バードストライク」、つまり鳥がエンジンに飛び込んでしまったときの状況まで再現可能にしている。