環境というのはものすごく多様だから、細かく見ればいくらでも違いはある。家電であれ生物であれ、環境に違いがある限り、違うものになっていく方向にドライブがかかり続ける。
さらに、家電製品でも生物でも、製品/生物の側が環境を能動的に変えていく力をもっている。
家電製品に新しい機能が付け加われば、今までそんなことは考えたこともなかったユーザーが、その機能によって出現する新しい生活を満喫する。
「翌朝暖房自動ON」のスイッチが登場すると、それによって翌朝の生活環境が変わる人は、少なくとも何人かはいるわけだ。
自然の生物だって、ビーバーのダムや鳥の巣のように、人工物を作ることによって生物は周囲の環境を変えていく(=ニッチ構築【F. J. オドリン=スミーほか著、佐倉統ほか訳『ニッチ構築 忘れられていた進化過程』】)。
そうやって新しくできた環境が、また新たな製品や生物を進化させる。かくして家電ガジェットはいつまでも根絶できず、生物の進化はいつまでも続くことになる。
先ほど、この無限の断片化現象は、家電と生物が情報の自己複製システムだから生じると 述べた。このようなシステムは、なにもこの2つに限るものではない。
学術研究だってそうだし、SNS上を飛び交う情報もそうだ。どっちも、どんどん断片化が進んでいるのも御存知のとおりだろう。
ネット上での分断やいがみあいは、ものすごい勢いで増えているが、ここまでの議論からすれば、これは根絶もできないし、今後も増加していくと予想される。
注意しておくべきは、ネットが普及して同じ情報システムに統合されたから分断が際立つようになったということである。別々のところでそれぞれ勝手に管を巻いているだけだったら、今ほどは気にならなかったはずである。
それが今は、ツイッターやフェイスブックで、思想信条の異なる者どうし、お互いの意見を瞬時に知ることができる。こちらも反論の機会と手段がある。
インターネットは、意見の分断と対立を加速するのである。