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家電の謎機能と謎スイッチ、なぜ増える? 考察したら怖いことに…

東大教授にお題エッセイを頼んでみた
2人の東大教授に3人の編集者がいろいろと無茶ぶりをする連続エッセイ企画「2×3(ツーバイスリー)」。
毎月「漢字3文字」をお題にして進行していますが、今回は
「断片化」。……それでなぜエアコンの話題に?

謎のランプを放置して出かける恐怖

先日、出がけに自宅書斎のエアコンをオフにしたとき、今まで見たことのない小さいオレンジ色のランプがついたままになっていてちょっと焦った。

そこはかとなく怪しげな雰囲気を醸し出していたのだが、そのときは時間がなかったのでそのままにして出かけた。

あとで判明したのは、「翌朝暖房自動ON」というスイッチがリモコンにあり、それを誤って押してしまったらしいということだった。

翌朝暖房自動ON。

そんなスイッチ、少なくともぼくにはいらない。おそらく一般的にも、あまり需要はないのではないか。

あったら使う人は多少いるのかもしれないが、そのスイッチをリモコンの表の誤動作しやすい位置に付ける必要はないだろう。なにより、それがONになっていることを示すライトの意味が、すぐに一目でわからなかった。

リモコンみんなわかって使ってるの? Photo by iStock

このような不要不急の機能、いわゆるガジェットがどんどん増えていくのは、家電製品に限らず、自動車やパソコンなど工業製品一般に広く見られる現象だ。

工業製品は古今東西いつでもどこでも、ますます高機能でますます使いにくいものになっていくのである。

 

その高機能、使いづらいですよ!

アメリカの認知科学者ドナルド・ノーマンの『誰のためのデザイン?』はこの分野の古典で、原著初版が出版されたのは、今を去ること30年前、1988年のことである(邦訳は新曜社、1990年。原著改訂版が2002年、その邦訳は2015年、同じく新曜社)。

ノーマンはこの本で、製作側の技術者の心理に注目している。

新しい技術が登場すれば、それをどこかに使いたくなるというものだ。また、その製品の開発に関わった人たちであれば、自分たちが手塩にかけて生み出したものへの愛着もある。それがさらにパワーアップすることで、その製品を使うお客の生活は、より便利に、より快適になるはずだと無条件に思い込んでいる。

自分たちが作ったものを人々が便利に思ってくれれば、こんなうれしいことはない。あれもできる、これも付けよう──その結果、家電製品や自動車には「誰が使うんだこんなの?」というガジェットが続々と搭載され、エアコンやテレビのリモコンの押しボタンの数はどんどん増えて、まったく使いにくい製品が誕生することになるのである。

高機能は、使いにくいのだ。

代わりにノーマンは、使う側からの視点、発想がなにより大事なのだと強調した。当然だ。彼の影響は大きかった。以後、「ユーザビリティ」は工業デザイナーの合い言葉となり、ずいぶんと使いやすいインターフェイスの製品も増えている。世界は確実に良い方向に向かっている。

だがそれでハッピーエンドにならないのも世の常である。