夫の突然死後の「腫れ物扱い」が苦しくて…かわいそう、はもうやめて

私たちが「没イチ会」を作った理由
小谷 みどり プロフィール

死別の悲しさ、つらさを超えた人の集まりがない

その翌年あたりから、講義の最初の日に、「私は没イチです」と自己紹介したところ、生徒のなかからも「私も没イチです」と教えてくださる人が出てきました。「50歳以上」という生徒たちの年代的に「没イチ」は少なからずいました。

庄司さんたちと「没イチの会をつくろう」と話していたのですが、私も忙しくて何もしないままになっていたところ、2015年に入学してきた池内章さん(当時60歳)が「自分が幹事を買って出るので、没イチ会を作りましょう」と申し出てくれ、没イチ会が誕生したのです。池内さんも病による急逝で妻と死別した体験を本で語ってくれた一人です。

会員の資格はバツイチでも結婚経験のないお一人様でもない「没イチ」の人死別してからの年数を「没歴」と言います。そして、会の使命には「死んだ配偶者の分も、2倍人生を楽しむ使命を帯びた人の会」というテーマを掲げました。

とはいえ、毎回何かテーマを掲げて話をするといった堅い会ではなく、没イチ会は単なる飲み会にすぎません。自身の身の上話をしたい人はすればいいし、話したくない人は聞き役に徹すればいいのです。

身の上を説明をしなくてもいい飲み会の場が、それぞれのメンバーの救いになった Photo by iStock

メンバー全員が配偶者と死別し、つらい思いや体験を乗り越え、立教セカンドステージ大学で学ぼうという心境になるまでに這い上がってきたので、相手の話を聞いても、妙な同情や慰めはしないのです。そんなルールを作ったわけではないのですが、相手の経験談に無理なく共感できる雰囲気が自然にできあがったのは、やはり同じ境遇の人たちだからなのだろうと思います。

 

「再婚したい?」

没イチ会で上る話題は、さまざまです。

たいがいが他愛もない話ですが、「再婚したいか」「特定の相手が欲しいか」「配偶者の遺品はいつ処分したか」「今でも、配偶者の親族とつきあっているか」など、同じ境遇の人たち同士だからできる話題も多いのです。「死んだ配偶者は夢に出るか」といった話題でも盛り上がるし、「仏壇に毎日、ご飯を供えるのが大変だけど、みんなはどうしているのか」といった情報交換もします。

いずれも、没イチになって一番悲しい時期には、考えもしなかった話題ばかりだろうと思います。お酒を飲みながら、そんな話をみんなでしているのだから、会話を漏れ聞いた他のテーブルのお客さんたちは、さぞかしびっくりしているに違いありません。

配偶者、パートナーがいる限り、いずれ必ずどちらかが「没イチ」になる――とは、小谷さんが頻繁に使う言葉だが、聞けば当たり前に思っても、健在でいる者にしてみれば普段から考えることはほぼないし、考えたくないというのが本音かもしれない。伴侶を亡くすという経験をへて、「配偶者の分も人生を楽しむ」という考え方に至ったのは、仲間があってのことでもあるだろう。

次回は配偶者の死をどのように受け入れて生活していくのか、その段階について語っていただく。