みなさんもご存知の通り、安倍政権は大規模な金融緩和を中心に据え、円安による輸出拡大を志向した経済政策を運営してきました。ところが、先月の自民党総裁選での討論会において、安倍首相は「(金融緩和を)いつまでも続けてよいとは思わない」と発言し、アベノミクスの看板である大規模な金融緩和の出口戦略に言及したのです。
さらに、「すべての世代が安心できる社会保障制度に向けて、3年をかけて大改革を行いたい」とも述べていて、経済政策の軸足が金融から人口問題に変わってきていることをうかがわせました。
私のアベノミクスに対する印象は、景気にばかり配慮する代償として、財政や社会保障の問題は放置し続けてきたという面が強いのですが、いよいよ急速な高齢化を受けて、人口減少問題に比重を移さざるをえなくなったと言えそうです。
これからの日本では生産年齢人口が絶対数でも人口比でも大幅に減少していきます。その帰結として、社会保障制度の持続可能性を脅かし、深刻な人手不足や消費の停滞をもたらし、日本経済をじわじわと衰退させていく見通しにあります。
このような負の作用に対抗する有効な方法が、定年を迎えた人々の就業促進です。定年後の就業が増え続けていけば、日本社会にとっていくつもの処方箋が提供されるからです。
第一の処方箋は、年金の支給開始年齢を引き上げるなど社会保障改革を進めやすい環境をつくるということです。
第二の処方箋は、医療費・介護費の削減に効果を上げるということです。
第三は、就業人口が増えることで深刻な人手不足が緩和されるということです。
そして第四に、就業により所得が増えることで高齢者の将来不安が軽減されるということです。