日本人がほとんど知らない「世界大学ランキング」の問題点

そもそもどう順位付けしているの?
畠山 勝太 プロフィール

世界大学ランキングを上げるために

この手の解説記事を執筆すると、他者の意見を批判しておいて、自分は何も提言しないのか、と突っ込まれるのが世の常である。そこで、まとめにかえて日本が世界大学ランキングを上げるために参考になる事例を紹介したい。

世界大学ランキングは学部別のランキングも発表されている。そこで、私の専門分野である教育学部のランキングを見てみよう。

世界トップ10を上から見ると、スタンフォード大学・ハーバード大学・オックスフォード大学など日本でも有名な大学が並んでいる。そして、もう少し下に目をやると、ミシガン大学が7位に、ミシガン州立大学が10位にランクインしている。

前者はまだしも、私が在籍する後者を知っている日本人はほとんどいないのではないかと思う。ではなぜ、それほどメジャーでもない州の州立大学が2つも世界のトップ10に名を連ねることができているのであろうか?

〔PHOTO〕gettyimages

もちろんこれには、中国人留学生が支払う高い学費により、研究費を確保しているなど、さまざまな理由がある。

しかし、ここで前回の記事で米国の現在の教育庁長官であるデヴォス氏が、大富豪としての財力を活用して、教育改革を推進する団体や政府に多額の献金をしていたことを思い出していただきたい。

この手の教育改革の推進に研究はつきもので、推進したい教育政策が本当に有効だったのか検証するために、政策実施時に大学などの研究機関に調査を依頼するのがつきものである。そして、デヴォス氏が資金を主に出していたのが、彼女が生まれ育ったミシガン州の政府・団体・機関である。

真冬は氷点下30度にも達し、文化的な大都市からも遠いミシガン州に、著名な教育学者が集まってくるのはなぜか。デヴォス氏のような大富豪が拠出する豊富な研究資金があり、かつ豊富な資金により整備されたデータもある、という論文を書くにはうってつけの環境が大きな理由の一つである。

そして、デヴォス氏らの改革派が推進する綺麗な政策実験が頻繁に起こるので、引用されやすい質の高い論文に仕上げやすいという環境もある。

また、豊富な資金による奨学金・研究費によりそこそこの学生を博士課程にリサーチアシスタントとして集めることが出来るため、論文も量産しやすい。

著名な研究者による質の高い授業を奨学金で安価に受けるために、遠路はるばる留学生がやってきて、冬の過酷な環境と都会の文化的な生活からかけ離れた環境に、アフリカの突き抜けるような青空が恋しい・アジアのカオスな雑踏が懐かしいなどと不平不満を言いながらも日々勉学や研究に励んでいる。

 

世界大学ランキングの評価項目とミシガン州の二つの大学の教育学部が示唆するのは、日本の大学が世界ランキングを上げるためにすべきことは、著名な研究者をたきつけ、その研究者たちが良質な論文を量産できる研究環境を整えることである。

それがあればその他の微細な得点項目もある程度付随してくるであろう。冒頭で紹介した秋入学やリカレント教育の実施で上げられる点数は微々たるものであるし、それが配点の大部分を占める研究活動を大幅に向上させるとも考えられない。

世界大学ランキングがどのようにして作成されているか、そして複合指標に基づく国際ランキングの活用事例と短所を把握すれば、的外れな提言を的外れだと認識することは可能である。

中国や韓国などの近隣諸国の大学に猛追を受けている、ないしはすでに追い抜かれてしまった状況を鑑みれば、悪い冗談としか思えないような専門家でもない著名人の提言を真に受けている余裕は、日本にはもう残されていないはずだ。