日本人がほとんど知らない「世界大学ランキング」の問題点

そもそもどう順位付けしているの?
畠山 勝太 プロフィール

第一の問題点は、指標の選択である。

国際ランキングを作成する際には、信頼できる・国際比較可能・すべての国に存在している、という3条件を満たす指標のみを活用することになる。

そのため、より適切にその分野を評価できる指標があっても、この3条件を一つでも満たしていない場合、より不適切な指標が評価指標として使われてしまう点は重要である。

私が従事していたCPIAのジェンダー評価も、まったく同じ問題を抱えていた。

ジェンダー問題は社会的な慣習や文化に根差したものであるから、これを捉えている指標が評価で考慮されていることが望ましい。

しかし、慣習や文化に根差したものであるがゆえに国際比較が難しい。女子割礼(FGM)が良い例である。これは慣習や文化に根差した典型的なジェンダー問題であるが、主にアフリカでしか見られないため、女子割礼の実施率をもって南アジアや中東、南米のジェンダー問題を捉えることができない。

このため、アフリカにおいてはジェンダー問題を測定する最も優れた指標の一つであっても、国際ランキングに使用することはできない。

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同様のことは世界大学ランキングにも当てはまる。例えば教育分野を考えてみよう。

大学教育を測定する上で最も適した指標は何であろうか? これは議論を呼ぶテーマであるが、大学教育の経済的側面に限って言えば、大学教育によって学生にどれだけ付加価値を付けてあげられたかは一つの重要な指標となるだろう。

より具体的に言うと、学生の家庭背景や出身地・ジェンダーなどをコントロールしたうえで、大学教育によってどれだけ生涯所得を上げてあげられたか、ということになる。

(生徒の背景をコントロールするのは重要で、たとえば日本では卒業大学別年収ランキングのようなものが世間を賑わせることがあるが、大体この手のランキングでトップに来る東京大学は、保護者の年収もトップであるし、特に近年学生の出身地も東京周辺に集中している。

どちらの要因も、子供の将来の所得を上げる要因になるので、これらをコントロールしないと、東京大学が生涯年収を上昇させているのか、入学してきた生徒の背景が生涯年収を上昇させているのに過ぎないのかが判別できない)

 

しかし、日本を含めて大半の国でこのようなデータが整備されていない。

教育という営みを教育生産関数でとらえると、インプット→プロセス→アウトプット→アウトカム、と表現できるが、世界大学ランキングで使われている「職員・学生数比率」などは教育のプロセスに関する指標に過ぎず、高等教育政策が目指す結果につながるのか不明瞭な部分があるため、前述のような直接教育のアウトプットを測定している指標に比べると大きく劣ってしまうと判断できる。

また、そもそも何を測定しているのか不明瞭な指標が考慮されているだけでなく、考慮されるべき指標が考慮されていないという問題もある。

前者の具体例は、「博士号授与数―学士号授与数比率」である。この比率の値が高いほど、学部生はティーチングアシスタントの支援を受けやすいという利点があるように見えるが、この比率が低いほど教授陣が直接学部生の指導に当たってくれるという利点があるようにも見える。

このような解釈に困る指標が評価対象に入っているにもかかわらず、TIMES誌による指標のページには、これに関する説明がない。

後者の具体例は卒業率である。入学してきた学生を卒業へと導けない教育の質が高いとは考えづらいが、特に米国の大学ではこの問題が顕著である。

米国の大学の卒業率は60%前後であり、4年制大学に入学した3人に1人は卒業証書を得ることなく大学を去っていく。

米国の大学といえども、世界大学ランキングの最上位に位置する大学群の卒業率は90%ぐらいであるが、それ以外の大学では卒業率が日本の大学ほどは高くなく、これを考慮すれば教育分野の点数がそこまで高くなりうるのか疑問を呈したくなる大学が数多く存在する。

そして、同様のことは研究や国際志向などにも少なからず当てはまってくるが、字数の関係で詳細は割愛する。