今年もタイムズ・ハイヤー・エデュケーションの「THE世界大学ランキング」(以下、世界大学ランキング)が発表された。
今年は東京大学も京都大学も順位を上げ、1000位以内にランクインする大学の数も増加し、例年この季節に漂う暗然たる空気感が無いのは良い知らせである。
そして、もう一つ恒例の出来事がある。それは、どのように世界大学ランキングが策定されているのかちゃんと把握せずになされる、明後日の方向を向いた高等教育政策への提言である。
世界大学ランキングがどのように作成されているのか理解すれば、どのような提言が望ましいのかまでは分からないにしても、どのような提言が考慮する価値がないのか把握することができる。
そこで本稿では、世界大学ランキングがどのように作成されているのかを解説し、さらにこの手の複合指標に基づく国際ランキングの問題点を指摘することで、このランキングが持つ意味を分析していく。
最後に、私からの提言として、日本の大学が世界大学ランキングを上げるために、参考になる事例を紹介する。
まず、世界大学ランキングに掲載される資格から紹介する。
世界大学ランキングはすべての高等教育機関がカバーされているわけではない。研究と教育がきちんとなされ、データを提供しているという当然の条件を除いても、二つの注目すべき条件がある。
一つ目は、学部生の教育を行っているという点である。
言い換えると大学院大学は除外される。日本にはこれに該当する高等教育機関がいくつかあり、たとえば政策研究大学院大学は、開発経済学や農業経済学の分野で実力のある高等教育機関であるがランキングからは除外されるし、奈良先端科学技術大も除外対象となる。
二つ目は、研究分野が一領域に偏り過ぎていない点である。
言い換えると単科大学は除外される。日本で言えば、上越教育大学や鳴門教育大学のような大学は、この条件により除外されている可能性がある。