吉野家「8億円超の赤字転落」の背景に見えた二つの要因

さらなる懸念も見えてきた
加谷 珪一 プロフィール

国内の金利が上昇しているということは、今後、物価上昇がさらに進むことを示唆している。そうだとするならば、外食産業はもちろんのこと、低価格をウリにしたビジネスの多くが苦境に陥ることになる。

生活必需品でほかに選択肢がない場合、事業者がコストを価格に転嫁しても、消費者は渋々これを受け入れるだろう。ヤマトや佐川など運送事業者の値上げを消費者が受け入れたのは、ほかに選択肢がないからである。

だが外食産業の場合にはそうはいかない。

外食チェーン各社は、同業者で顧客の奪い合いをしているだけではなく、他業種とも激しい顧客獲得合戦を行っており、価格が上がれば、容易に他業種に顧客を持って行かれてしまう。最近ではコンビニなど小売店が、外食産業をターゲットに顧客獲得に乗り出しており、外食産業は小売店とも戦わなければならない。

 

大幅なスリム化は必至?

今後、外食産業にとって大きな転換点となるのは2019年10月に実施される消費税の10%への増税だろう。消費増税にあたっては、消費者の生活水準を維持するため、一部の商品やサービスに軽減税率が適用される。

コンビニ業界は、店内に配置された飲食スペースで買ったものを食べる、いわゆるイートインについても軽減税率の対象とする方向で政府と調整に入っている。イートインの多くは簡便な設備だが、中にはファストフード並みの設備を持つところもあり、小売店と飲食店の境界線は曖昧になっている。

コンビニ業界としては、イートインはあくまでも休憩施設と位置付けており、食事を提供する場所ではないことから、軽減税率を適用できるとしている。一方、外食産業は、ほぼ例外なく10%増税の対象となる可能性が高い。

コンビニでの購入が8%で、飲食店の利用が10%ということになると、飲食店ではなくコンビニ食べ物を購入する傾向に拍車がかかるだろう。そうなってくると、多くの外食チェーンが抜本的な戦略の転換を迫られる可能性が高い。

コストが利益を圧迫する環境において事業者には二つの選択肢がある。

ひとつは高付加価値型のサービスへの転換だが、大衆向けの飲食店にとって実現は簡単ではないだろう。もうひとつは店舗網の縮小によるコストダウンである。不採算店舗の廃止を徹底的に進め、経営をスリム化すれば、ある程度の時間を稼ぐことができる。多くの外食事業者が採用するのは、おそらく後者ということになるだろう。