吉野家「8億円超の赤字転落」の背景に見えた二つの要因

さらなる懸念も見えてきた

牛丼チェーン大手の吉野家が中間決算で赤字転落した。今の日本経済はデフレと超低金利の継続が大前提となっているが、その基本構造は徐々に変わりつつある。「安い」の代名詞であった吉野家の業績悪化は、デフレを前提とした外食産業にとって大きな転換点が迫っていることを示唆している。

 

米中の事情で牛肉価格が高騰

吉野家などを運営する吉野家ホールディングスの2018年3~8月期決算(中間決算)は8億5000万円の最終赤字となった。前年同期は12億9000万円の黒字であり、2018年2月期の通期決算も14億9000万円の黒字だったことを考えると、業績が急降下したことが分かる。

売上高は前年同期比で2.7%増加したにもかかわらず、最終損益が赤字に転落したのはコストの増加によって営業利益が激減してしまったからである。

同社の原価率は前年同期比で約1%ポイント上昇したが、これは原材料価格の高騰が原因である。主力チェーンの吉野家で使用する牛肉はショートプレートと呼ばれる部位で、ほとんどが米国からの輸入である。米国ではショートプレートは食用には用いられておらず、ただ廃棄されるだけだったので、日本の牛肉チェーンは安い価格で買い付けることができた。

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牛丼チェーン各社が圧倒的な低価格で商品を提供できたことにはこうした背景があるのだが、この状況を大きく変えたのが中国の台頭とトランプ大統領である。

中国では火鍋に脂身の多い牛肉を使うことから、これまで日本だけが大量輸入していたショートプレートを中国も輸入するようになってきた。これに加えて、米国が中国との貿易戦争に乗り出したことで牛肉価格が高騰。昨年までキロあたり650円程度だったショートプレートの卸売価格は一時、800円近くまで上昇した。

牛肉の買い付けは長期契約が多く、価格上昇がすぐに全体の原価率アップにつながるわけではない。だが、アジア地域の経済発展は今後も続く可能性が高く、以前のような価格で牛肉を買うことはもはや不可能というのが業界関係者の一致した見方となっている。

吉野家をはじめとする牛丼チェーン各社はこうした事態を受けて、牛丼以外のメニューの開発を進めており、吉野家でも鯖ミソ定食や鶏丼などの強化を行っている。だが食材全般が値上がりしている状況では、その効果は限定的なものにならざるを得ない。