〔PHOTO〕gettyimages

いま中東で何が起きているのか? アメリカ覇権の終焉が意味すること

世界史的に中東の現状を再考する

中東でのアメリカ覇権は陰り…

トランプ米大統領の登場後、中東情勢をめぐるアメリカの外交姿勢が大きく変容している。

同大統領は「アメリカ・ファースト」を掲げているため、世界各地に起こっている地域紛争もアメリカ国内政治の文脈で対処しようとしている。

その典型的な例が、イスラエル建国の65周年に当たる2018年5月14日にアメリカ大使館をテル・アヴィヴからエルサレムに移転するセレモニーを行ったことである。支持基盤である米国内のユダヤ系とキリスト教福音派に向けた政治セレモニーであった。

アメリカでは1995年に上下院において「エルサレム大使館法」が決議されているので、トランプ大統領の決定は国内措置としては当然のこととみなされている。

しかし、この大使館移転に関しては、クリントン大統領以来、歴代大統領が大統領権限で外交問題に関する拒否権を発動して、移転を阻止してきたという歴史的背景がある。

親イスラエル姿勢を明確にしていたクリントン大統領でさえも、エルサレムに大使館建設予定地を購入していたにもかかわらず、大使館移転自体の決定については保留していたのである。

〔PHOTO〕gettyimages

イスラエルはこれまでもアメリカの第51番目の州だと揶揄されてきた歴史がある。実際、アメリカは国連安保理において、これまで43回にもわたってイスラエルを擁護するために拒否権を発動してきたのである。

しかし、トランプ大統領はこれまでの歴代大統領とはいささか様相を異にしている。娘婿でユダヤ系のジャレッド・クシュナー大統領上級顧問の影がちらついているからである。

 

「アメリカ・ファースト」というきわめてわかりやすいトランプ大統領の中東政策なのではあるが、中間選挙を見据えただけの国内政治的な理由だけではその中東政策は破綻しかねない。

もちろん、トランプ大統領登場以前から中東におけるアメリカの覇権は陰りを見せていた。中東では目下、サウジアラビア、トルコ、イラン、イスラエル、エジプトといった「地域大国」の動きが中東情勢の行方を決定づけている。

そんな中東の政治的な現状を踏まえて、筆者はこの8月、『「中東」の世界史』(作品社)という単行本を刊行した。

今、中東は過渡期に差し掛かっているので、21世紀も20年が経過しようというこの時期に改めて世界史的に中東の現状を再考してみようと思ったのである。