米中衝突を「経済問題」と捉えると見落としてしまう、最も重要なこと

橋爪大三郎の「社会学の窓から」②
橋爪 大三郎 プロフィール

米中の覇権争いは、文明の衝突だ

人びとは、米中貿易戦争とよぶ。軍事衝突になると言うひともいる。しかし、軍事衝突にはならない。軍事衝突にならないと読んでいるから、アメリカは貿易戦争を仕掛けているのだ。これは経済問題ではない。軍事問題でさえない。中国とアメリカの価値観と行動様式の違いの問題、すなわち、文明の問題である。

中国とアメリカは、価値観と行動様式がまるで違うのだが、中国人がこのことに気がついているとは言えない。アメリカ人も、あまりわかっていない。中国人もアメリカ人も、自分のことしか知らず、相手のことがよくわからないのである。

 

中国共産党のシステムは、マルクス・レーニン主義とも異なる独特のものなので、少しだけ説明しておこう。

中国社会の基本ユニットを、「単位(dan-wei)」という。工場や学校や病院や市役所や、すべての事業所はみな単位である。単位には党委員会があって、党が単位を指導する。党委員会は上部組織につながり、最終的には党中央につながっている。中国の資本主義は、共産党がやっているのである。

党は、人事を握っている。予算を握っている。資金を握っている。行政と法律と軍事を握っている。中国には「民間」にあたるものがない。このような磐石のシステムだから、ベルリンの壁が崩れても、中国共産党はビクともしないのである。

中国共産党のシステムは、伝統中国の儒教的官僚制が、近代資本主義にあわせて変容したものである。高級官僚は市場経済から、いくらでもうまい汁を吸うことができる。権限が、経済的利益に変換できるからだ。これを腐敗と言うなら、このシステムは腐敗のかたまりである。

アメリカは、このシステムが世界を席捲することが許せない。そんなことは、あってはならないと考える。米中貿易摩擦は、経済問題ではない。だから、アメリカは妥協しないだろう。中国は、それを理解し始めている。中国がいつ、降参するか。あるいは、破滅へと突っ走るか。第三の道を切り開くか。世界が注目している。