米中衝突を「経済問題」と捉えると見落としてしまう、最も重要なこと

橋爪大三郎の「社会学の窓から」②
橋爪 大三郎 プロフィール

全力で叩き潰してきた国だから

アメリカは、覇権国である。経済大国であり、軍事大国である。世界秩序に関わり、責任をもっている。すでに1世紀以上も、その座にある。

覇権国の特徴は、国際社会の利益と自国の国益とが、一体化していることだ。このことはやむをえない。覇権国も、自国国民の支持がなければ、必要な行動をとれないのだ。

アメリカは、19世紀の覇権国・イギリスと正面から衝突しないで、すんなり覇権国の地位を手に入れた。経済が巨大になった、自然の流れだ。

アメリカが、真剣に正面から対決し、打倒した国が3つある。ナチス・ドイツ。大日本帝国。そして、ソ連である。

この3国の共通点は何か。ナチス・ドイツは、狂信的な人種イデオロギーをそなえた戦争マシンである。大日本帝国は、強力な軍事力をそなえた神聖国家である。ソ連は、世界革命を目指すマルクス主義の核保有国である。

いずれも、「自由と民主主義」とは異なる価値観をもち、旧大陸の一角に、手出しできない軍事的テリトリーを作ろうとした。アメリカの覇権に、挑戦した。

価値観が、どう異なるのか。独裁的で、思想の自由がない点が共通する。ドイツでは、ナチス以外の党は禁止された。日本では、大政翼賛会の体制のもと、政党は解散した。ソ連は、共産党の独裁だ。全体主義である。こうした国家が、支配力をもつことを、アメリカは本能的に嫌悪し、全力で叩き潰そうとしてきた。

 

中国を「覇権への挑戦者と認定」

中国に対して、アメリカはこういう態度を取ったことがなかった。毛沢東の抗日ゲリラに、アメリカは好意的だった。中ソ論争のあと、ニクソンは毛沢東にテコ入れした。鄧小平の改革開放を支援した。中国が弱くて、脅威でなかったから。そして、日本やソ連に対抗するのに役立ったから、である。

天安門事件(1989)で、改革開放もこれまでかと思われた。しかしアメリカは、中国の潜在力に、魅力を感じた。投資と技術供与を続け、中国にアメリカ市場を開いた。資本主義経済が発展すれば、韓国や台湾のように、民主化するのではと期待もした。

でも気がつけば、中国共産党の一党支配はそのままで、アメリカに匹敵する巨大な経済大国が出現しようとしている。

習近平の一帯一路や、南シナ海への進出や、知的財産権の問題や、中国流の身勝手なやり方は、我慢ならない。中国の軍事力が、アメリカに対抗できる実力をそなえる前に、中国の経済発展をくじかなければならない。

こういう覚悟を、トランプ政権が、いや、アメリカの指導層が、固めている可能性が高い。いまはじめて、覇権国家アメリカは、中国を、打倒すべき挑戦者と認めたのである。