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アメリカ「教育改革」の行方〜トランプの2年で一体何が変わったのか

女子教育には全く力を入れていない…

意外と知らない「米国の教育システム」

米国では来月11月にトランプ政権になって初の中間選挙が開かれる。

現在の上院・下院共に与党である共和党が、多数派を維持してトランプ政権に勢いをつけるのか、それとも民主党が巻き返してトランプ政権路線にブレーキをかけるのか。貿易・防衛・外交などの面で米国と繋がりが深い日本にとっても見逃せない選挙となる。

そこで今回は、中間選挙を前に、トランプ政権の教育政策について振り返ることとしたい。

具体的には、オバマ前政権から何が変わって何が変わっていないのかを分析することで、トランプ政権の教育政策の特徴をあぶり出していく。字数の関係で本稿では基礎教育システム(初等・中等教育)に焦点を絞って論を進めて行く。

本題に入る前に、トランプ政権の教育政策の特徴を理解するために、米国の教育システムについて少し解説する。

『危機に立つ国家(A Nation at Risk)』が出版された1980年代中盤以降の米国の教育政策は、伝統的な地域に根差した公立学校(小学校・中学校・高校)に影響力を持つ地域レベルの教育委員会と、教育委員会の選挙に大きな影響力を持っていた教員組合に代表される保守派と、これらの政策アクターの影響力を取り除こうとする改革派の対立に特徴づけられる。

保守派は民主主義的な学校運営と民主主義を担う市民の育成に重きを置くが、改革派は学力や教育の生産性に重きを置くという特徴を持つ。

 

改革派が推進する教育政策は主に3つある。

一つ目は、私立学校の拡大である。私立学校は教育委員会の影響力が及ばないので、私立学校の拡大は教育委員会の影響力の削減へとつながる。

二つ目は、バウチャー制度の拡大である。この制度の下では、子供一人一人がバウチャー(クーポン券)を受け取り、通学したい学校にこれを渡すことで、授業料の全額ないしは一定額を子供に代わって政府が学校に支払うという仕組みである。従来の教育委員会は、地域の住民に対して固定資産税を通じた徴税権を持っていたが、この権限が削られることになるので、教育委員会の影響力は激減する。

三つ目は、チャータースクール(公設民営学校)の拡大である。チャータースクールは、学校施設などは政府が負担するものの、その運営を非営利・営利の運営団体に任せるという方法である。これも、教育委員会が学校の運営に口出しできなくなるので、その影響力が大きく削がれる。米国ではこの3つの教育政策をまとめて学校選択制(The Choice Policy)の拡大と呼んでいる。

また、革新派の特徴として、地方レベルの教育委員会選挙に、国レベルの利益団体が影響力を行使するという点が挙げられる。

従来教育委員会の選挙というものは、その地区の中で政治献金が集められて、その地区の中で全てが完結していた。

しかし、シリコンバレーで財を成した人物が設立した新しい教育系の財団は、全国各地の大都市を中心に改革派の教育委員の候補に対して多額の献金をすることで、国レベルの議論を地方レベルに落とし込むという役割を果たしている(詳しくは「ビルゲイツやザッカーバーグは救世主なのか、それとも破壊者なのか?-教育政策における新たな利益団体の話」を参照)。

では、トランプ政権の教育政策がどのようなものであるのか、論を進めていこう。