「パクリ疑惑」というだけで、なぜこんなに炎上してしまうのか

「知財リテラシー」を楽しく磨こう
稲穂 健市 プロフィール

人類は「模倣」を通じて進歩してきた

そこで、そのような問題を解決すべく、昨年2月、筆者は各知的財産権について楽しく学ぶことができる入門書として『楽しく学べる「知財」入門』を上梓した(本の内容がそのままタイトルになっている)。

さらに、今年8月、トラブルの類型ごとに知的財産権に関する理解を深めることができる書籍として、『こうして知財は炎上する ― ビジネスに役立つ13の基礎知識』(NHK出版新書)を上梓した。

 

同書は、平昌五輪の男子フィギュアスケートで金メダルを獲得した羽生結弦選手がお気に入りの「プーさん」を連れて行かなかった理由、平昌五輪の女子カーリングチームが広めた流行語「そだねー」の商標権争奪戦のその後、freeeとマネーフォワード(フィンテックのベンチャー)の特許裁判の行方、地域ブランド「八丁味噌」を巡るトラブルの本質についての考察、海外に流出する日本の品種を保護する方法、「価値あるデータ」と知的財産制度の今後など、身近な最新事例が満載の内容となっている。

それに関連して、9月下旬に、『こうして知財は炎上する』の著者インタビューが「Yahoo! ニュース」に掲載された(「スポーツ報知」の記事からの転載)。

この記事の中で「新聞で常に話題になる便乗商法やパクリは、どこまでが「セーフ」でどこからが「アウト」なのだろうか」という問いかけが出てくるのだが、そのコメント欄では、「パクる意思があるならアウトもセーフもない。アウト」という意見が支持を集めていた。

なるほど。その気持ちはわからなくはない。だが、法的な問題とモラル的な問題とを別々に考えないと、全体像を正しく把握できなくなるリスクがある点には注意する必要がある。

また、そもそも「パクリ」という言葉自体に悪意が込められているが、「模倣」がすべてモラル的に問題があるというわけでもない。モラル的にも問題のない合法的な「模倣」まで葬り去られるようになってしまっては、本末転倒である。

そもそも、人類は「模倣」を通じて進歩してきたという側面を見逃してはならない。農業や文字の伝搬からもわかるように、人類の歴史は「模倣」の歴史でもある。我々が使っている漢字や仮名にしても中国を起源とするものだが、「パクリだからアウト」という主張に同意する方は、さすがにいないだろう。

また、ネットにおける知的財産権絡みのトラブルは、法的な議論よりも感情論が先行してしまう事例が増えている。たとえば、いったん「パクリ」をする人物であるとのレッテルを貼られると、各所から袋叩きに遭ったりする。「知財リテラシー」の欠如が無益な「炎上」を生んでいることに我々もそろそろ気づき始める必要がある。

「炎上」回避のための「忖度」も増えているが、それもまた、文化や技術の進歩の足かせとなり、結果として、社会全体の生産性を下げる方向に働いているかもしれないという負の側面も、もっと広く理解されるべきであるように思う。

これから益々、知的財産権絡みのトラブルは増えていくだろうから、冷静な判断ができるだけの「知財リテラシー」が求められている局面が増大していくことは間違いない。トラブルに冷静に対処できるだけの「知財リテラシー」を持つことが、今後の知的創造社会を前向きに発展させていく原動力になるのではないだろうか。

さあ、「知財リテラシー」を高めよう!
知的財産をこんなに笑いながら学べる本はない!