著作権も正しく学ぼう(photo by iStock)

「パクリ疑惑」というだけで、なぜこんなに炎上してしまうのか

「知財リテラシー」を楽しく磨こう
マリカー、『カメラを止めるな!』、大迫半端ないってTシャツ、フラダンス……知的財産権にまつわるニュースが、連日、世の中を騒がせている。「知財」を楽しく解説している弁理士で、東北大学特任准教授の稲穂健市氏は、私たちの「知財リテラシー」の欠如こそが、無益な「炎上」を生んでいる場合もあるのではないか、と冷静に分析する。

『カメラを止めるな!』の盗作疑惑

著作権や商標権などの知的財産権を巡る話題を目にする機会が益々増えてきた。

ゲームキャラクター「マリオ」などのコスプレをした外国人らがレンタルカートに乗った一団は、今や東京の名物にもなっているが、9月27日、任天堂は、このサービスを手掛ける会社を相手取った訴訟で勝訴したと発表した。

同日に出された同社のプレスリリースによると、東京地裁の判決で、「マリオ」などのキャラのコスチュームの貸与が禁止されるなど、不正競争行為の差止と損害賠償金の支払いなどが命じられたという。

著作権侵害について触れていないことから考えると、被告企業の一部行為が不正競争防止法に違反すると認められた一方で、「マリオ」などのコスプレについての著作権侵害は認められなかったのかもしれない。

 

著作権侵害と言うと、8月下旬に、大ヒット中の映画『カメラを止めるな!』の盗作疑惑が話題となった。ヒット作が登場すると、大なり小なり「パクリ疑惑」が巻き起こるのは今も昔も変わらない。

たとえば、少し古い話となるが、40代以上の方であれば、1994年公開のディズニー映画『ライオンキング』について、1960年代の手塚アニメ作品『ジャングル大帝』と共通点が多いことから盗作疑惑が持ち上がったことを覚えているのではないだろうか。

この『カメラを止めるな!』の盗作疑惑については、様々な専門家によって既に解説がなされているので多くは触れないが、基本的に、著作権法は「創作的な表現」を保護する法律だから、「アイデア」が同じであっても表現が異なっていれば著作権侵害とはならない

また、同じような表現であっても、それが「ありふれた表現」であれば著作権侵害ではない。これは大前提として押さえておく必要がある(モラル的な問題は、また別の話である)。

昨年2月に上梓した拙著『楽しく学べる「知財」入門』(講談社現代新書)では、過去の似たような事案として、2003年放送のNHK大河ドラマ『武蔵MUSASHI』をめぐる裁判を取り上げている。

その第1話が、黒澤明監督の映画『七人の侍』に似ていたことから裁判となったのだ。実際にかなりの共通点があったものの、裁判では「共通する部分はアイデアの段階にとどまる」などとして著作権侵害は否定されている。

知財のイロハを理解するために必読の書

「フラダンスに著作権」での誤解

また、最近の著作権を巡る報道では、9月20日に「フラダンスに著作権あり」という趣旨の判決が大阪地裁で出たというものがあった。

こういった見出しを付けた記事がネットで拡散すると、「フラダンスの振り付けは著作物だから、似たような振り付けをした場合は著作権侵害となるんですよね」と誤解する人が必ず出てくる。

前述したように、そもそも「ありふれた表現」であれば著作物ではない。また、著作権侵害の判断基準は、「依拠性」(オリジナルを利用して作ったこと)と「類似性」(オリジナルと表現が類似していること)である。

だから、偶然似たような振り付けになってしまった場合は依拠性が否定され、著作権侵害とはならない。また、似たような振り付けであっても、「オリジナルの表現を直接感じ取れない」場合は類似性が否定されることから、やはり著作権侵害とはならない。

さらに、形式的に著作権を侵害するような場合でも、「営利を目的としない上演」など著作権が制限されるケースにおいても、特に許可は必要とされない。