ありふれたあの薬が「アルツハイマー治療」の光明になるかもしれない

今度こそ認知症治療薬の誕生、か?

さらに、ジロートン同様、アルツハイマーをはじめとする認知症の治療に応用されているぜんそく薬に、モンテルカスト(Montelukast)があります。

モンテルカストもまた、ロイコトリエンの働きを阻害することでぜんそく症状を抑える薬で、患者の体質や副作用などに応じて使い分けられています。

モンテルカストドラッグストア店員が、モンテルカストを自販機に補充する Photo by Getty Images

2015年、モンテルカストを投与した高齢のラットで、脳内の神経炎症が減少したほか、学習能力や記憶力といった認知機能が改善したという論文が発表されました。これはぜんそく薬によって生きた哺乳類の認知症改善を実証した主要論文の一つですが、原因候補であるアミロイドやタウの蓄積とは関連付けられていません。

ジロートンとモンテルカストでは、ターゲットとなる物質が微妙に異なるのですが、ロイコトリエンの働きを阻害するという点では共通しています。

今後、研究が進んでモンテルカストの効果とタウ/アミロイド蓄積との関係が明らかになれば、ぜんそく薬を認知症治療に活用する動きが加速するかもしれません。

 

過度の期待は禁物

一方で、今回の成果はあくまで動物実験の結果であることを忘れてはいけません。残念ながら、ジロートンもモンテルカストも、動物実験では再現的に効果が確かめられていますが、人間での臨床はこれからという段階です。

少なくとも2018年現在、世界中の研究者による膨大な努力にもかかわらず、認知症の根治法は確立されていません。そのことを踏まえて、海外サイトHealthNewsReview.orgでは今回の研究について以下のように述べています。

any discovery — no matter how far from actual clinical use — is often the trigger for premature enthusiasm and hype. News releases and articles therefore must do their utmost to present findings in cautious context, especially when the research described is in laboratory animals.

すでに高い安全性が確認されているジロートンのような薬が人間の認知症にも本当に効果があるとすれば、応用可能性に非常に期待の持てるニュースです。

しかし、動物実験はあくまでも動物実験。希望を持ちつつ、現状を冷静にとらえて今後の展開に期待したいところです。

続報がでましたら、また紹介します。

【参照元】
Learning Impairments, Memory Deficits, and Neuropathology in Aged Tau Transgenic Mice Are Dependent on Leukotrienes Biosynthesis: Role of the cdk5 Kinase Pathway
Researchers reverse cognitive impairments in mice with dementia
Dementia-related brain damage reversed in mice using 20-year-old asthma drug
Structural and functional rejuvenation of the aged brain by an approved anti-asthmatic drug
脳の糸くずのない未来

文・くまむん
企業の経営部門でExcelバトルに勤しむサラリーマンライター。学生時代の専攻分野はSurface Science。好きなものはソシャゲとバーチャルYoutuberとクラシックピアノ(主にロマン派)。