ロリータモデル兼看護師の私が、公衆の面前で「ビンタ」された瞬間

世界から悲しみが減る方法を考えてみた
青木 美沙子 プロフィール

撮影のため金髪にした髪をすぐ黒染めし病院へ

モデルのキャリアとは別に、看護師を志したわたしは、看護科のある高校へと進み、短大を卒業する頃には国家資格に合格して正看護師となりました。看護師としてのキャリアとロリータモデルとしてのキャリアは同時進行で進みました。

どちらも本気で、命を燃やして取り組みました。夜勤明けに髪の毛をブリーチして金髪にし、そのまま雑誌の撮影をし、夜帰宅してまた黒染めにして翌日の病院勤務に備えるというようなことをしていました。

 

看護師としての自分のキャリアを思ったときに、一度は大学病院で実績を積む必要があると考えました。そしてわたしは、大学病院で5年間勤め上げるという目標を立てました。多くの患者さんにとって、大学病院は最後の砦です。深刻な場面に出くわすことも多く、悩み苦しみながら生命と向き合う日々でした。

現場に出て初めて知るような問題も多くあり、日々、勉強不足を痛感しました。勉強不足を少しでも補おうと、看護師勤務とロリータモデルの撮影の合間に、医療の勉強会にも参加しました。看護師のシフトを中心に、モデル撮影のスケジュールを埋め、隙間をぬって勉強会に参加したのです。

写真:著者提供

あるときのことです。

その日はわりとゆっくりとしていて、予定は午後の医療の勉強会のみでした。時間があったのでいつもより多めにパニエを履いて、カチューシャ代わりのミニハットをつけて出かけました。

予定より早く会場についたわたしは、講師の先生がよく見えるように一番前の席に座りました。大学病院で受け持っている患者さんのことを考えながら、質疑応答のときの先生への質問内容について考えていました。

次第に席は埋まっていき、まわりもガヤガヤしてきました。後ろを振り向くと、数十席ほどあった椅子は全て埋まっていて、わたしは頭のミニハットが後ろの方々の視界の邪魔にならないように調整しました。

時間となり、講師の先生が脇から現れました。会場は一般のセミナー教室で、壁側に大きめのホワイトボードとその前にマイク台が置かれていました。わたしの位置は1列目のちょうどマイク真正面でした。わたしはパイプ椅子に座っていました。

先生と自然に目が合いました。すると先生はマイク台から離れて、わたしのほうへとやって来ました。そしてわたしに、突然、バチンとビンタを食らわしたのです。

今思うと、先生はビンタをするつもりではなく、頭のミニハットを叩くつもりだったようです。だけどその大きな男の手は、ミニハットの的からちょっとずれて、わたしの左耳と頬っぺたにバチン!と命中したのです。

先生は一瞬、「しまった」という表情をしましたが、すぐに怒りの表情となり「医療の勉強の場に帽子を被ってくるとは何事だ!」と大きくて低い声で怒鳴りました。