ノーベル賞を利用する「インチキがん治療」に騙されるな

本庶教授に失礼な「医療」もある
及川 夕子 プロフィール

医師とメディアに問われる、がん情報のリテラシー

誤った医療情報は患者の命に関わる問題だ。にもかかわらず、注目度が高いからという理由で、有名人のがんの情報を、ろくに検証もしないまま取り上げるメディアは多い。医師の監修すらなく、コメンテーターが憶測で持論を語る医療情報は、信じない方がいい。医師といっても、がんの臨床経験のない、肩書きだけの医師がコメントすることもある。残念であり反省するところだが、日本のメディアの医療に対する意識は、それぐらい低い、という認識も持っていたほうがいいのだ。

 

さくらももこさん、樹木希林さん、山本“KID”徳郁さんと訃報が続き、最近では、高須克弥院長、三遊亭円楽さんのがん公表も話題を呼んでいる。そのたび、メディアでは闘病体験が、その人の生き方や作品などとともにドラマチックに語られる。確かにそれはとても感動的ではある。しかし、それに心酔してしまうと、自分ががんになったとき誤った選択をしかねない。

「冷静さを失い、怪しい情報を信じてしまうのは、多くの人が、がん=すぐ死ぬ病気で怖いものと思っているからだと思います。ましてや、がんの治療もつらいし、副作用も怖いし、『副作用も少なく、体に優しくがんを治す治療があるよ』といわれると、人の心は簡単に動いてしまう。有名人を始め、サイトなどに掲載される体験談は興味をひかれるかも知れませんが、自分に当てはまるかはわかりません

がんにはいくつものタイプがあり、病状も1人1人違います。誰かがAという治療法で症状がよくなったとしても、自分にはそれは合わないことも多いのです。体験談を全否定するわけではありませんが、どう治療するかは医師としっかりと相談すべきであるとことが大前提です」

勝俣医師は、ここ数年、「信頼できるがん情報」についてさまざまなメディアや自分のtwitterでも配信し続けている。しかし、それでもインチキ医療は増え、メディアのがん報道の質もなかなか向上しないと嘆く。

「こういう話をすると、国民・患者も、もっとリテラシーを身につけなくてはいけない、という結論になります。もちろん、リテラシーをもったほうがいいですが、それより改善すべきは、情報を発信する側のメディアや医療者だと思います。メディアも医学報道をするなら少しは医学を学んでほしい。そして、私たち医師も、『インチキ医療は許さない、正しい医療を』という情報発信をもっとしていくべきと思います」