ノーベル賞を利用する「インチキがん治療」に騙されるな

本庶教授に失礼な「医療」もある
及川 夕子 プロフィール

「優しい治療」「がんが消えた」の宣伝文句は怪しい

勝俣医師は、この問題をメディアやネットで何度も指摘してきたが、そうしたインチキクリニックへ駆け込む患者は、後を立たない。

「免疫が上がると聞くと、がんが治りそうなイメージを持ってしまいがち。ですが、“免疫療法”とネットで検索すると、まともな情報以上に怪しい情報で溢れています。例えば、免疫細胞を採取し、培養して体内に戻すという〝免疫細胞治療〟。これは高額な上に、臨床試験が行われていない治療法。効果が実証されていないものなので、注意を」と勝俣医師。

 

インチキながん治療を見分けるコツとして、勝俣医師は以下をあげる。

1 保険が効かない高額な自由診療であること

2 「がんが消えた、治った」「副作用がない」など根拠のないうたい文句を使う

3 効果のあった患者の体験談を売りにしている

今回のノーベル賞受賞に乗じて、自由診療で独自の免疫療法を勧めるクリニックは、PRを強化し、ネットなどで情報を配信する可能性も高い。

「ほかの抗がん剤やホルモン療法などと併用した治療法を提示しているケースもよくあります。また、免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ)を少量だけブレンドして免疫療法と言っているところもあります。“独自開発の治療法”と提示してあると、素晴らしい治療法に思う人もいるようですが、簡単にいえば、効果も副作用も何の実証もないアブナイ治療法といえるわけです」

やはり上記の3つの項目に当てはまるようなら、疑って慎重に検討すべきなのだ。

また、報道が過熱しているときこそ冷静な視点も重要だと勝俣医師は言う。画期的とされる免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボ)でさえも、“夢の治療”とまでは言えない。万人に有効というわけではなく、治療対象は限られていて、治療を受けられたとしても、効果が出ないが人いることも知っておきたい。

なお「先進医療」というと、より良い治療法に聞こえがちだ。あくまでも研究段階のもの。「標準治療」というと、「先進医療」より劣るように感じる人も多いようだが、“世界的にもっとも認められスタンダードな治療”という意味なのだ。言葉の持つイメージに引きずられることなく、「がん治療のベースは医学的に根拠のある標準治療」であることを忘れないでおこう。