ノーベル賞のメダルが輝く授賞式。ノーベルの誕生日である12月10日に平和賞以外の授賞式はストックホルムで行われる Photo by Getty Images

ノーベル賞を利用する「インチキがん治療」に騙されるな

本庶教授に失礼な「医療」もある

10月1日、本庶佑・京都大特別教授のノーベル生理学・医学賞受賞が決まり、本庶氏の発見から開発された「免疫チェックポイント阻害剤」が、早速脚光を浴びている。これを受けて、テレビのワイドショーなどでは、「夢の治療法がついに登場!」「劇的な治療効果」といった前のめりな報道も見受けられ、熱量は最高潮だ。

一方で、「免疫療法」とうたう治療法の中には、根拠のないいわゆる“インチキ療法”もあり、SNSなどでは「混同しないで」と、専門家が警鐘を鳴らしている。

また、最近は樹木希林さんをはじめ、さくらももこさん、山本KID徳郁さんなど有名人ががんで亡くなるニュースが相次ぎ、そのたびに治療法の選択に注目が集まるが、ワイドショーやネットで流れるメディアの情報が必ずしもがん情報を正確に伝えているとは言い難く、注意が必要だ。

改めて、私たちはがん情報とどう向き合うべきなのか。気をつけるべきポイントを、がん治療に詳しい日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授で腫瘍内科医の勝俣範之医師に聞いた。

 

インチキな免疫療法がノーベル賞を利用し始めた

まず知っておいてほしいことは、がんになると、通常は “標準治療”をベースに医師と治療法を選択し、治療がスタートするということだ。標準治療とは、医学的に認められた最善の治療のことである。がんの標準治療には、「手術」、抗がん剤治療などの「薬物療法」、「放射線治療」の3本柱があり、これらを組み合わせて行われるのががん治療の基本となる。

ノーベル賞受賞で話題の「オプジーボ(ニボルマブ)」は、免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる分子標的薬(抗体薬)で、“抗がん剤の仲間”。がん細胞によってかけられたブレーキを外すことで免疫細胞の働きを回復し、がん細胞を攻撃できるようにする。これは、標準治療であり、臨床試験で効果が証明されたの治療法だ。現在、日本では6剤が承認されている。

問題は、臨床試験で効果が証明された免疫チェック阻害剤とは別に、「免疫療法」とうたいエビデンスのない治療法が、一部のクリニックで提供されていることだ。

「日本では、医師なら誰でも抗がん剤を扱えます。そのため、免疫という名前をつけ、効果のない治療法を高額な自由診療で提供するクリニックが存在し、野放しです。今回の本庶先生のノーベル賞受賞も、インチキな免疫療法の宣伝のために利用しているクリニックが、すでに登場しています」