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4兆円カジノ都市・マカオに集う「中国超富裕層」が日本に来る日

莫大な中国マネーは日本に落ちるか

「僕はマカオのカジノで働いているんです」

 そう自己紹介をすると、たいていの人には怪訝な顔で、こう質問されます。

「カジノってマフィアが牛耳っているんでしょ? 事件に巻き込まれたりしないの?」

日本に暮らしていると、なかなかなじみがないせいでしょうか、多くの日本人の間では、「カジノ=怖い場所」という印象が定着していると思います。

もともと僕は日本でごくごく普通のサラリーマンとして働いていましたが、6年前に香港に渡り、その後、マカオのカジノで働くようになりました。以来、かれこれ6年近くマカオのカジノで仕事をしているわけですが、僕自身が怖い思いをしたことは一度たりともありません。それどころか、僕自身の感覚では、マカオ自体は日本の何倍も安全な国。もしかすると、世界で一番住みやすい国ではないかと思うことも多いです。

正式名称は「中華人民共和国マカオ特別行政区」。世田谷区の広さでありながら、GDP世界19位、一人当たりGDPが世界5位という豊かな都市だ Photo by iStock

こう語るのは、マカオのカジノでエージェントとして働く尾嶋誠史さん。日本でもカジノを含む統合型リゾート(IR)法案が2018年7月20日に可決、近い将来カジノが作られるのではと注目が集まっている。

6年間のエージェント経験をもとに記した著書『カジノエージェントが見た天国と地獄』から、マカオがなぜ世界一成功しているカジノの都市となりえたのか、そして日本でカジノを成功させるには何が大切なのか、尾嶋さんの分析を紹介しよう。

 

韓国・シンガポールにもあるカジノ

日本でも現在いわゆるカジノ法案が可決され、近い将来、カジノが作られるのではないかと注目が集まっています。

カジノに対して「治安が悪くなるのでは」との懸念をする人も多いですが、世界で、カジノが合法化されている国は、実は案外多いです。世界的に有名なのはよく映画の舞台にもなっているアメリカのラスベガス、またヨーロッパのモナコは富裕層の観光地としても知名度が高いです。

アジアにも、数多くのカジノがあります。隣国・韓国やシンガポール、マレーシア、フィリピンなど多数の国で、カジノは合法化されています。カジノによって治安が悪くなった国もあれば、反対にカジノによって治安が良くなった国もある。その最たる例がマカオだと言えるでしょう。

ラスベガスの7倍近い売り上げを支える中国

マカオは人口約65万人の小さな都市です。広さは、東京の世田谷区の半分くらいの面積しかありません。カジノ自体の数やスケールの大きさでいえば、世界一を誇るのはダントツでラスベガスですが、その総売上の7倍近いのがマカオのカジノです。

マカオにあるカジノ施設が1年間に稼ぎ出す売上金額は、日本円にして、およそ3~4兆円にも上ると言われています。なぜ、こんな小さな都市が世界ナンバー1のカジノ市場になれたのか。その大きな要因のひとつとして挙げられるのが、中国経済の発展でしょう。

マカオは、中国本土にありながら、長らくポルトガルの植民地として扱われてきました。その後、1999年にマカオが中国に返還され、特別行政区として成立。大きな転機が訪れるのは、2002年。このとき、マカオ政府がカジノの経営権の対外開放を実施しました。つまり、これまではマカオ内の企業のみにカジノの運営を任せていたところを、アメリカをはじめとする外資のカジノ会社にも門戸を開くようになったのです。

それまでカジノ市場を独占していたのが、マカオで最も有名なカジノ経営者であるスタンレー・ホー。彼が率いるSTDM社はもちろん、そのほかにも、ラスベガス系をはじめとする外資系企業などが多数参入し、マカオのカジノ市場がどんどん盛り上がっていきました。

そして、時を同じくして、中国本土の経済発展が右肩上がりに。これにより、多くの中国人富裕層が誕生し、彼らがマカオの発展に大きく影響を与えるようになっていきます。現在の中国の人口の10%が富裕層だと言われています。人口13億人のうち、およそ1億3000万人が貯蓄1億円以上を持っているということ。言うなれば、中国本土には、日本の総人口と同じくらいの人数の1億円以上の資産を持つお金持ちが存在するのです。