“代理婚活”は「世も末」か? どこまでもすれ違う親子の感情…

連載「婚難の時代」第2回
共同通信 生活報道部取材班 プロフィール

「独身で親と同居なんてみっともない」

「親が断られるなら、私は傷つかないで済む」。母親が代理婚活をしているという都内在住の横山美帆(38)は、率直な気持ちを吐露した。

父親は大手銀行に勤め、母親は専業主婦。一人っ子で、小学校から高校まで私立の「お嬢様学校」に通い、有名私立大学を卒業後、総合職で大手食品会社に入った。「もともと真面目な性格なので、親の期待に応えることを優先して生きてきた」と振り返る。

業務成績は同期の中でもトップクラスだったが、その分、プライベートを犠牲にして働いていた。20代の頃に交際した男性とは、すれ違いが原因で自然消滅した。

 

33歳の時、突然、両親が「この年になって独身で親と同居なんてみっともない。仕事ばかりしていないで早く結婚しなさい」と言い出した。仕事を評価してくれていた両親の思いがけない言葉に、動揺した美帆はすぐに結婚相談所に登録した。

しかし、恋愛経験が少ないせいか、お見合いでは会話が盛り上がらない。両親に反対されないために家庭環境を確認しようと、初対面で「親御さんはどちらの会社にお勤めでしたか」と尋ねたら、露骨に嫌な顔をされた。

「勉強は頑張れば正解が分かるけど、婚活には答えがない。やればやるほど『お前は欠陥人間だ』と否定された気持ちになった」

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3年間、土日のどちらか1日は婚活に充てるというノルマを自分に課したが、成果は上がらず、心身共に疲弊していった。ある日、10円玉の大きさの円形脱毛症を見つけたとき「もうやめよう」と踏ん切りがついた。

美帆と入れ替わるように、母親が熱心に「代理婚活」の交流会に参加するようになった。しかし、母が気に入るのは、「最終学歴が早慶以上」「年収1000万円」「医者」「総合商社勤務」など、あからさまにスペックが高い男性ばかり。

婚活を3年間続けてきた美帆には「絶対に自分とはマッチングしない」と分かるが、後ろめたさから口出しはしないでいる。実際、これまで何度も断りの連絡が来ているようだった。

美帆は「みっともない」という言葉を浴びてから、母親の行動が「親心」なのか疑問に感じるようになった。ただ、老いを見せ始めた両親を落胆させたくない、という気持ちと葛藤している。

「好きに生きていいよ、と言ってくれたら楽になれるのに」と声を震わせた。

「代理婚活」で幸せに

一方、キューピッドになった親も誕生している。13年に東北地方で開かれた交流会で、松山早苗(69)と佐藤曜子(65)は意気投合した。

早苗が当時40歳だった長女の結婚相手を探そうと思ったきっかけは11年の東日本大震災。自治体職員として被災者のために身を粉にして働く娘に「自分の幸せもつかんで」と強く願うようになった。

曜子も同じ頃、当時37歳で会社員の長男が「結婚してもいいかな」とつぶやいたのを聞き逃さなかった。

交流会では初対面でも、相手の仕事や収入、家族構成など多くの情報を得られる。早苗は「結婚は家と家とのつながり。下準備ができるので『こんなはずじゃなかった』という失敗を防いでくれる」と評価する。

2人は15年に双子の女児の「おばあちゃん」になった。母の日に子どもや孫とそろって旅行するなどつながりは深い。「古くからの友人に巡り合ったような感覚」とほほえみ合った。

(※文中仮名、年齢は取材当時のもの)