photo by iStock

“代理婚活”は「世も末」か? どこまでもすれ違う親子の感情…

連載「婚難の時代」第2回

独身の子どもに代わって親が結婚相手を探す「代理婚活」。連載「婚難の時代」第1回記事には大きな反響が寄せられた。「世も末」の「地獄」なのか、「現代のお見合いシステム」なのか--。当事者たちの取材を通じて、子どもの嫁・婿探しに駆け回る親心の本質にさらに迫っていく。

頭をよぎる「結婚してこそ一人前」

「ただいま」「ゆきちゃん、おかえり」。北関東に住む吉村早紀子(72)は、お盆休みに帰省した次男の行雄(43)の姿に、久しぶりに会えた嬉しさの反面、寂しい気持ちになった。「夏休みに恋人と旅行する予定はないのね」

行雄は首都圏の工場で部品管理の仕事をしている。優しくおとなしい性格で、お酒も苦手。女性と巡り合う機会はないように見えた。本人に尋ねるといつも「彼女はいないよ」という答えが返ってきた。

そんな息子のために5年前、最初に「代理婚活」の交流会に参加したのは3歳年上の夫晃一だった。晃一は周囲の人に紹介話を頼み、習い事の英会話教室でも独身女性を見つけると「今度、息子とお茶でもどう」と声をかけていた。

しかし、体調を崩した晃一は2016年1月、73歳でこの世を去った。

 

早紀子は「自分たちが歩んできたように、伴侶と支え合う幸せな人生を歩ませたい」と、晃一の遺志を継ぐように熱心に息子の結婚相手を探すようになった。親戚、友人、夫の職場……。思い付いたところにはすべて声をかけた。

行雄に自分から進んで婚活をしている様子はなかった。どのくらい結婚願望があるのかはわからないが、両親が持ってきた見合い話を断ったことはない。一度だけ「お母さん、結婚しない人はいっぱいいるんだよ」と言われたことがあるくらいだ。

昨年5月、行雄が恋人を連れて自宅に来た。早紀子が旧知の晃一の部下に頼み紹介してもらった30代の女性だった。早紀子は息子の彼女に失礼がないように、事前に何度も一人で会話のリハーサルをして臨んだ。

実際に対面した2人は、はにかみながら見つめ合い、とても仲むつまじい様子だった。早紀子はうれしくなって、その日のうちに「ゆきちゃんの結婚が決まったかも」と親戚中に電話をかけた。

しかし、数日後、女性から行雄に「もう交際できない」と連絡がきた。理由はわからない。行雄は「お母さんのせいじゃないよ」とかばってくれたが、気を遣ったつもりでも無言のプレッシャーを与えたかもしれないと自分を責めた。

photo by Istock

「結婚はみんな順番にしていくものだと思っていた」とため息をつく早紀子。親は黙っていた方が本人がいい縁を見つけられる、と考えを改めようとしたが心配でたまらない。

古い考え方だと分かっているが「結婚してこそ一人前」という言葉が頭をよぎる。親思いで周囲にも気配りができる息子が、社会から「半人前」「変わり者」と後ろ指をさされるのは胸が痛む。

結婚さえしてくれれば、相手の女性には同居や墓の世話などは求めないつもりだ。当人同士が幸せならば、子どもがいない人生を選んでもいいとも思っている。

早紀子は仏壇の前に立ち、晃一にその日の出来事を報告するのを日課にしている。「ようやくゆきちゃんにいい人が見つかったよ」と報告できる日を夢見ている。