発達障害当事者が「生きづらい」と訴えるとどうなるか

鈴木大介×姫野桂対談【後編】
鈴木 大介, 姫野 桂 プロフィール

発達障害を告白した場合、数々の理不尽が起こる

姫野 貴族側の言説、新しい気付きでした。でもおそらく、貴族側の人たちは自分が貴族だと自覚はないです。私も先程までマッチョイズム側の自覚がありませんでしたし。言ってみれば、貴族側の人たちは定型さんに合わせられる部分があるんです。

鈴木 そうかもしれないです。また、最初本を読んだとき「頑張りましたね」という気持ちと共に、もっと「ギャー!」と不満を言ってもらいたい気持ちがありました。「苦しい」と言っちゃいけないという抑制を感じました。

でも、何度か読み返すうちに、診断以前に特性ゆえに「申し訳ない」の気持ちを重ねてきていることと、診断以降にも具体的に被る理不尽があるのだという部分に気づきました。僕自身が持っていた冷たい目もそうだし、発達障害だと入社時に申告していなかったせいで契約社員に降格させられるなんてことがあったり、発達障害より身体障害の方が就労の条件が良いとは知りませんでした。

写真:村田克己

普通、パッと見てわかる障害なら、障害があるとわかった時点で配慮しない社会の方に問題があるって責められますよね。駅に車いすの方向けの配慮がなかったら今は大問題になる。

けれども不定型発達は、「障害があります」「苦しいです」と言うことで、よけい社会に受け入れられなくなるっていう、とんでもない理不尽があるってことじゃないですか。それが一層「申し訳ない」感を育ててくるわけで、発達障害だとカミングアウトした場合の理不尽本を作ってもいいくらいだと思います。

 

姫野 障害だと言うことで理不尽を被る、当事者にとっては当たり前過ぎて気づいていませんでした。確かに私も自分の検査結果を書き下ろしに入れるときは仕事がなくなる覚悟で書きましたが、そのことに関しては盛大にスルーしていますね。じゃあ、次は発達障害の理不尽本を書こうかな(笑)。

鈴木 ぜひそうしてほしいです。その検査結果を書くと仕事を失うかもって感覚は、非当事者にはない。かつての僕を含め、定型サイドは自分たちが不定型の人たちにどんな理不尽を押し付けているか、まったく自覚ないですから、きちんと当事者サイドからアクションを起こしてほしいと思います。貴族もプロレタリアートも混在する姫野本から、そんな可能性を感じました。

姫野桂(ひめの・けい)フリーライター。1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをし、編集業務を学ぶ。卒業後は一般企業に就職。25歳のときライターに転身。現在は週刊誌やWebなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。