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貫通したはいいけれど……。セックスと虚無と乙女ゲーム

駄青春日記~マヌケな地獄の黙示録~③

短編小説集『完璧じゃない、あたしたち』で注目を集め、現代ビジネスでも時にユーモラスで時に鋭く世の中に問題提起をする記事を寄稿する気鋭の作家・王谷晶さんの「半自伝的」連載、待望の第3回です。いよいよ処女喪失! 刮目して読むべし。

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うちに来る?

超初対面の男性を目の前にして「私はこの人とやることになるんだろうな」という奇妙なシックスセンスが発動した18歳処女。後年このことを友達に話したら「一目惚れだったのでは?」と言われたが、よく分からない。

一目惚れのときめきやなんとも言えん腹の疼きは知っている。女子にしか感じたことないけど。このときの第六感にはそういうときめきもムラつきもなんにもなかった。後にも先にもこんな奇妙な「気付き」があったのは初めてだ。そういう意味では特別な感情だったのかなあとは思う。

さて、明るく元気な友近(仮)さんを中心としたトークはますます盛り上がり、私は赤べこのようにただ適当に頷いてそれをやり過ごしていた。どうも1学年上のグループらしく、新入生たる私に学校のあれこれを教えてくれる。そしていきなり、こんな言葉が飛び出してきた。

「今日デザイン科の仲間たちと飲み会があるの。あなたもいらっしゃいよ」

飲み会? それはあれか、人が集まって、酒を飲むやつ……。

女子校時代に同級生とやった飲み会しか知らない私は、同世代の男女混合の酒の場は未経験だった。どうもその場にいる人物も全員、シックスセンスが反応した無課金アバター氏も来るようだ。

 

これは今に至るまで続く悪い癖というか困った癖なのだけど、予想外のことに遭遇すると、それが良きにつけ悪しきにつけ「ネタになる」と思って飛び込んでしまう。成功しても失敗しても後でネタになるんだからいいじゃんという大雑把過ぎるヘンな前向き傾向がある。

なので私は、質問にもまともに答えられないくらいコミュニケーションがとれない人間であるにもかかわらず、「い……行きます」と返事してしまったのだった。

学校が終わり、すぐ近くにあるチェーンの居酒屋に一人で向かった。本当に入っていいのか入り口でだいぶ迷った。

仲間に入れるふりをして本気でそれに乗っかったら嘲笑するといういじめは小中学生時代にちょくちょく経験していたからだ。これもそれの一環だろうか……とうろうろしていたら、昼間同じテーブルについていた人の一人が気付いてくれて、無事店の中には入ることができた。

学生街によくある、だだっ広い座敷のあるこ汚い居酒屋である。けっこう多い、20人以上くらいの人が集まっていた。「あっ1年生! 来てくれたのね!」と友近(仮)さんに手招きされておずおずと隣に座る。変わった人だけどいい人だな、よく見ると可愛いし、と横目でちらちら見ていると向かいの席に無課金アバター氏が座ったのでひそかに驚いた。

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飲み会が始まった。酒は好きだ。酒が入れば、人が変わったように喋ることができる。酒を飲んでいる明るくおしゃべりな自分が私は好きだった。

その日も次々と飲み放題でレモンサワーのジョッキをあけ、すっかり友近(仮)さんとも他の人とも打ち解けて喋りまくった。そして気がつくと二次会三次会まで参加し、終電を逃した逃さないでうだうだと駆け引きをしている集団に残っていたのだった。

隣には無課金アバター氏(長いので以下氏とする)が立っていた。「終電まだある?」と聞かれたので、時計も見ずに無いですと答えた。氏は自分はまだ終電があり、家はここから数駅だと語った。やや沈黙があったのち、うちに来る?と言われたので、じゃあお邪魔しますと言った。