100人が挑んでも勝てなかったエンジニアの存在が教えてくれること

島国思考から脱出する方法②
岩崎 日出俊 プロフィール

100対1でも勝てる人材

フリーランスのエンジニア兼ミュージシャンとして活躍している青木秀仁さん(シャムロック・レコード代表取締役)が開発した音声入力アプリ「UDトーク」は、そのひとつの実例でしょう。UDが「ユニバーサルデザイン」の略であることからもわかるように、もともとは聴覚障害者が健常者との間で意思疎通しやすくなるよう開発されたものです。

このアプリをインストールしたスマホに向かって話すと、話した内容がすぐに文字となって表示され、しかもそれをパソコンやプロジェクターなどに転送して大画面に映し出すことができるため、聴覚障害のある人でも、今その場で何が話されているのか理解できます。

さらには日本語で話した内容をその場で約40カ国の外国語に翻訳して表示させることもできるため、母国語の異なる健常者どうしの意思疎通にも十分に使えます。

 

すでに20万ダウンロードを達成し、300社超が会議の議事録作成、文字起こしなどに利用しているとのことです。iPhoneなどにも音声入力機能はデフォルトで内蔵されていますが、スマホの場合は1回の入力に際して時間制限があります。UDトークの場合、最長10時間くらいずっと話し続けることも出来ます。

さらに特定の発音を特定の言葉に認識させる単語登録機能もついているため、音声認識率はひじょうに高いものになっています。私は自分の著作を書くときにもこのアプリに向かって話し、「聞き書き」させているくらいです。

青木さんによれば、このUDトークの開発の過程では、大手IT企業と競争になる局面もあったようです。大手は100人規模のエンジニアでチームを結成し開発に臨んだのだけれども結局は青木さん一人に勝てなかったのだとか。

私は勉啓塾という15名ほどの小規模な勉強会で青木さんのお話しを聞いたのですが、ご自分のことを「アスペルガー傾向あり」と説明していたのが印象的でした。大企業が評価するコミュニケーション能力や対人能力とは無縁で、パーティーなどは苦手、隅っこでプルプル震えていると言います。

人工知能がプログラムを書く時代にあっては、この青木さんのように「1人で100人に勝てる」特別なプログラマーにでもならない限り存在意義はない、それくらいの状況が現出するかもしれないのです。

いずれにしてもこのような時代にあって人工知能に簡単に代替されない個人であるためには、若いうちから自己の市場価値を高める武器を戦略的に身につけておく必要があります。

次回は、その具体的な「武器」についてお話しようと思います。