100人が挑んでも勝てなかったエンジニアの存在が教えてくれること

島国思考から脱出する方法②
岩崎 日出俊 プロフィール

ディストピア的未来

たとえば、ゴールドマンサックスの株式部にはかつて600人のトレーダーが常駐し、大口顧客の注文に応えていました。しかし今ではその仕事の大半をAIが行い、人間のスタッフは二人だけになっています。

ほかにも、アメリカの法律事務所ではパラリーガルの仕事を人工知能がやりはじめていますし、新聞記事の作成だって現実的にこなせるレベルまで来ています。おそらくいま世の中にある仕事のうち、AIに置き変えられない仕事を見つける方が難しいぐらいでしょう。

 

現在、比較的よく語られる未来予測の一つに、これまでは人類を縛り付けるものだった労働が、「天才的な人にだけ許される特権」になる、というものがあります。

つまり、大半の仕事をAIやロボットが効率よくやってくれる世界にあっては、普通の人が働いたところで社会にとって不利益にしかならないので働きたくても働けない。ただし社会全体の生産性はテクノロジーのおかげで高まり、それをベーシックインカムなどの形で再分配することになるため、働かなくても生活に困ることはない――というものです。

ただこれは、むしろユートピア的な夢想かもしれません。コンピューターやロボットに任せればなんでもできるとしても、実際に企業がそれらを導入するのは、導入コストとそれによって得られる利益を秤にかけてペイする場合だけでしょう。

ペイしない仕事に関しては引き続き人間にやらせることになるでしょうが、これらの仕事の場合、そもそもロボット導入に見合わない利益しか挙げられないのですから、人間に払う賃金だって必然的に低く抑えられるはずです。そうした、きわめてディストピア的な未来も十分に予想できるのです。

仕事を奪われるのは理系も同じ

AIに仕事を奪われるのは基本的に文系の人であって、理系は比較的安全と考えている人もいるかもしれませんが、理系だって実はそれほど安心はできません。アマゾンやApple、Googleが開発したAIやIBMのワトソンがプログラムを書いてくれるようになれば、現在いるほとんどのシステムエンジニア(SE)は不要になってしまうからです。

そもそもコンピュータープログラミングの世界では、100人のプログラマーがたった一人の天才的なプログラマーに太刀打ちできない例が普通にあります。アマゾンのジェフ・ベゾスも「複雑なソフトウェアを開発する場合、プログラマーの人数を増やすとかえって進捗は遅れる」と言っています。