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日本でイノベーションが起こらないのはなぜか?ある投資家の答え

島国思考から脱出する方法①
岩崎 日出俊 プロフィール

イノベーションを生み出す「余白」

アマゾンがイノベーションを起こすために行っている取り組みは「The Spheres」だけではありません。

同社は英国に3つの研究開発部門を擁していますが、そのうちのひとつであるエジンバラの研究施設では2週間に1日、スタッフが自分の担当業務とは関係なくなんでも好きなプロジェクトに取り組める「アナーキーフライデー」と呼ばれる日が設けられています。これまでにAmazonから生まれた発明のうち特に重要なものは、このアナーキーフライデーをきっかけにして生まれた例が多いと言われています。

ただこの取り組み自体は、アメリカ企業では一般的だったりします。たとえばGoogleには、社員が一日の勤務時間の20%は業務以外のことに費やしてよいとされる「20%ルール」がかつて存在し、同社の主力サービスである「Gmail」や「グーグルマップ」は、いずれもその時間から生まれています。

 

こうしたカルチャーの源流は、おそらくはアメリカの化学メーカー「3M」にあります。3Mには昔から、一日の勤務時間のうち15%は業務以外の自分の関心のあることに使わなければいけないという不文律があり、1980年に同社が発売し、いまや糊付き付箋の代名詞となった「ポストイット」は、3Mの社員が教会の讃美歌集の頁のしおりになるものを探していて、毎日の「15%」の時間を利用して開発に漕ぎ着けたものでした。

このような「余白」を業務時間の中に設けるのは、今の日本の企業文化ではなかなか持てない発想だと思いますが、それ以上に日本の企業人にとって耳が痛く、また導入も難しいのが、アマゾンにおける「関係部署間の調整」でしょう。同社ではジェフ・ベゾスの方針のもと、これを単なる時間と労力のムダとして切り捨てているのです。

ひとつのプロジェクトを進める上でいくつもの部署を跨ぎ、関与する人員が増えたところでお互いのコミュニケーションにエネルギーが割かれるばかりだし、せっかくのアイディアだって多人数で議論をすればいつの間にか無難なものになってしまう。

だから部署間のコミュニケーションは少なければ少ないほどよい、というわけです。

私も日本の銀行で働いていましたので、日本のビジネスマンが上司への報告や相談、あるいは関係部署との根回しにどれだけ時間やエネルギーを割いているか、またこれらの業務にいかにムダが多いかはよく知っています。

しかしスタンドプレーが嫌われ、責任も成果もなるべく広く薄く分かち合うことが好まれる日本の企業文化にあっては、実際に関係部署間の調整をオミットしようとすれば、各方面から猛烈な反発が返ってくるでしょう。

運動会と「均一性」

イノベーションとは、要は「人と違うことを考える」「これまでとは違った新しい発想をする」ということです。その意味で皆が均一性を志向し、他人と違うことを怖がる同調圧力ほどイノベーションを阻害するものはありません。

日本人が均一性を好むということは、日本人論としてよく語られるものでもあり、それを克服すべきと考えている人も少なくないと思います。ただ私は、日本社会に刻み込まれた均一性の呪縛は、私たち日本人が自分で考えているよりずっと根深いものかもしれない、と思うことがあります

私の見るところ、それを何よりも象徴しているのが「運動会」です。実はこの運動会、学校などで教育の一環として行われているのは日本と北朝鮮、そして韓国や台湾、中国東北部(旧満州)の一部だけであるということを、皆さんはご存知だったでしょうか?