経産省が目論むITエンジニア「年収倍増計画」は実現できるか

平均600万円→1200万円に?

「DXレポート」は就業者数において多数を占める受託系(183社で48万2603人)に焦点を当てつつ、実は生産性が高いネットサービス系(179社で11万3061人)を念頭においているようにさえ思えてくる。

表にまとめると、産業規模においてネット系は受託系よりはるかに小さいように見える。しかし仮に、ネット系の労働分配率が受託系並み(35%)に高ければ、平均年収1473万円という値がはじき出される。逆に就業者の平均年収を1200万円に固定すれば、ネット系の労働分配率は28.5%となり、受託系の36.6%を10ポイント近く下回る。つまり、十分に利益が出る計算である。

 

すべての企業が「ネット企業」になれば、もしや…

おそらく、東京オリンピック・パラリンピックが済んだ2021年がターニング・ポイントになるだろう。硬直した組織とルールで運営される既存の企業は「2025年の崖」への坂を転げ落ち始める。

しかし経営者も就業者も「茹でガエル」なので、危機感を抱くことはない。その時になって、ビジョンのないサラリーマン社長や「なんちゃってCIO(最高情報責任者)が、「おい、ウチのDXはどうなってるんだ」とIT部門を責め立てても、万事休すである。

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しかし、それでは困る。改めて「DXレポート」の中の《DX実現シナリオ》の図を眺めてみると、

(1)顧客、市場の変化に迅速・柔軟に対応しつつ、

(2)クラウド、モバイル、AI等のデジタル技術を、マイクロサービス、アジャイル等の手法で迅速に取り入れ、

(3)素早く新たな商品、サービス、ビジネスモデルを国際市場に展開→あらゆる企業が“デジタル企業”に

という文言が目に入る。経産省は「DXレポート」で、要するに、すべての企業がネット企業を目指せと言っているのだ。

ブレイクダウンすると、ITを駆使して「省けることは何か」を追求せよ、ということだろう。

テレワークを採用すれば、「通勤」という行為が消える。ペーパーレスにすれば「伝票」「手続き」「押印」「書類による伝達」「全員参加の会議」などがITに置き換わり、仕事のスピードは3倍も4倍も早く回り始める。

「完璧」を諦めて、誤りは迅速に修正する体制を整える。できるだけフラットな組織にする。仕事から属人性を排除する−―などなどだ。そうすることで就業者1人当たりの生産性(≒売上高、営業利益)を、20世紀型企業の2〜3倍に引き上げる。それで初めて、就業者の平均年収1200万円超が実現するというのが、経産省の想定ではあるまいか。

「DXレポート」は、近未来の日本の産業政策が「ネット型ビジネスモデル重視」にシフトすること、つまり「ITのユーザー企業」を「ITサービス企業」へ転換するための支援策を講じるであろうことも示唆している。