自動運転は、本当に超高齢社会を迎えたこの国を救うのか

「未来」を展望する二人の読み方
藤井 太洋, 河合 雅司 プロフィール

藤井 若い人を呼び込めるポテンシャルのある施策がほしいですね。

たとえば、東京はこれほどまでに住宅が求められているのに、高層住宅が少ないですからね。2階建ての狭小住宅が延々と連なる風景は、世界的に見ても異様でしょう。これ、法律がそうさせているんですよ。

2階建て以上を建てられないようにして、小金持ちのために土地をロックしてしまっている。現在増えてきている空き家を潰して、安く住めるフラットを建てたら学生や若い人たちは全部そこに住みますよ。

河合 いずれにせよ、東京も地方も、2018年の社会のサイズのまま、これまでの成功体験に基づく発想で、今までの便利さとか豊かさを維持しようとするならば、どこかで破綻するんだと思います。人口動態の変化というものが、我々の意識とか価値の変化を迫っています。

日本語が溶けてゆく

藤井 ボリュームが減っていくというのはほんとに大変なことなので、今危惧しているのは、どれくらいまで日本人が減ると、日本語で学問ができなくなるのかということです。

たとえば今ですら、いくつかのビジネス用語は日本語にできていないんです。「コミット」という言葉を日本語に翻訳する体力は、この30年間の中で失われてしまったんですね。

河合 なるほど。

藤井 最近の小学生用の図鑑には、英語で用語が書かれているんです。固有名詞ではなく、「三畳紀」が「Triassic period」とか。日本語も書いてあるのですが、英語も大きい。

おそらく彼らが大人になるころには、「三畳紀」は日本語からなくなっているかもしれない。「爬虫類」という言葉もひょっとしたらなくなるかもしれない。なくなったときに新しく生まれた門や生物界の名前を日本語にできる気がしないんですよね。

そうやって日本語が消えていくのは間違いないので、ピジン化といいますか、日本語の文化というものもどんどん英語圏の人たちの使う用語、文章などに溶けていくんだろうという気がするんです。

河合 それは規模の問題なのでしょうか。戦国時代には、日本人は一千数百万人しかいなかったとされる。それでも日本語はずっと続いてきているわけです。

規模が小さくなると言葉の置き換え力が弱くなるのは確かだと思いますが、それ以上に、海外の人たちとの交わりのなかで置き換える能力が衰えてきたことのほうが大きいのかなと。

藤井 置き換えずに使う方が便利だということもあると思います。

河合 人口が減少しても日本が世界になくてはならない存在で有り続けられるかどうかには、教育がすごく重要になってくると思いますね。

現在、子どもは100万人も生まれていないわけですが、いずれ50万人以下になっていくわけです。本当に少ない若い人たちに、どういう能力をつけさせてくのか、学ぶ機会を作っていくのかということは、これまで以上に国家全体として真剣に考えざるを得ないと思います。

藤井 大学は無償化してほしいですね。

河合 子どもが激減するのだから、意欲も能力もある有望な若者は生活費も含めてすべて国費で学べるようにしてもよいと思います。

その代わり、国費で学んだ若者は、身に付けた知識や技能を日本社会にきちんと還元してもらう。

若者が激減すれば、新たな成長分野を生み出し、日本を引っ張っていくような人材も減ります。それぐらい大胆なことをしないと、日本発のイノベーションはなかなか起こりづらくなると思います。

藤井 フランス人とかアメリカ人の友人と話していますと、子どもをもつことにかんして、経済状態にかかわらず不安は持ってないんですよね、誰も。子どもは何とかなるっていう安心感。社会全体の、隣人の子どもに対する扱いが日本とは違います。

河合 江戸時代の日本もそうだったんですよ。ところが、知らないうちに子どもを育てることが親にとってコスト、負担になってしまった。

かつては、子どもは「大人」たちの未来であったわけですね。だから子宝と言ったわけです。子育てのハードルがどんどん高い社会になってしまって、若い人たちが子どもをもうけることをためらう、ということになってしまった。

終の棲家はベッドひとつあればよい

藤井 フランスの建築家、ル・コルビジェが人生の最後の時を過ごした家ってほんとに小さいんですよ。「カップ・マルタンの休暇小屋」というんですが、ベッドがあって、傍に何冊かの本が置けるだけで。

キッチンすらなくて、近くのレストランに、毎日ご飯を食べに行っていた。仕事をするときは、パリで好きに改造したテラスハウスを使っていたわけですけれども。

河合 最後はベッドひとつあれば人間は旅立てるんですよ。ライフステージによって「住まい方」もどんどん変えていけるようになるといいですね。

仕事の在り方も、暮らし方も、街の形も、人口減少社会ではすべてのことを変えざるを得ないのです。

新しいテクノロジーも含め、われわれに求められているのは変化を恐れないことですね。

私は『未来の年表』で「変化はチャンスなり」と書きました。人口がすごい勢いで減っていくという「静かなる有事」は、やり方次第ではさらに日本を豊かな国にしていける大きなチャンスでもあるのです。

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