自動運転は、本当に超高齢社会を迎えたこの国を救うのか

「未来」を展望する二人の読み方
藤井 太洋, 河合 雅司 プロフィール

河合 それを小さな路地に至るまで全部やるのかという話ですよね。

藤井 そうです。儲かる範囲にかんしてはやるということになるでしょうね。

河合 それでは、すごく中途半端の社会になってしまいますね。

藤井 それでも構わないと思います。それでも0よりはマシだと思いますし、今のようなフリーライドを今後も許すのかというと、許せないという立場に立ちたいですね。

河合 私は別にテクノロジーの将来を悲観しているわけでも否定しているわけでもないのです。ただし、そのテクノロジーの使い手の多くが80歳以上の高齢者になっていく社会のなかで、技術開発がその時代の人たちのニーズに合ったものになっていくのかを懸念しているのです。

つまり、研究者や開発者たちが少子高齢化問題をどれくらい織り込んで開発を進めているのかということです。

2018年を起点に未来像を描いているんだとすると、人口動態の大きな変化とともに、社会課題がどんどんずれていくので、せっかく開発した技術がようやく実現化した頃には人々のニーズと異なってしまい、役に立たなくなっているかもしれない。

開発者の皆様には、人口減少社会の社会課題を予見して技術開発を進めてもらいたいですね。

少子高齢化問題を開発者こそ考えるべしと言う河合氏

農地に通勤する時代がやってくる

藤井 農業も地道に地道にですけれど、変わってきているんですよね。農業法人も簡単に作れるようになりましたし。

河合 そうですね。私は農水省の第三者委員会委員も務めていて、中山間地域の農地をどうするのかということを考えているんですが、私は通勤型農業を提案しています。

もちろん、農業は食住隣接がいちばん理想的な産業ですが、農業従事者の子どもの教育や、高齢者の介護や医療をどうするかということが問題になっています。少子高齢化によって、農業という産業が抱える課題を解決する以前に、中山間地の生活そのものが成り立たなくなってきているのです。

東京のサラリーマンが1時間かけて通勤するように、今後は山の麓の街から農地まで通う「通勤農業」といった発想が必要になっていくのではないでしょうか。

さらに、『未来の年表2』でも書いたように、日本では葉物野菜の機械化がすごく遅れています。刈り取りや収穫野菜の集配の多くを、まだ人手でやっている。これは、これまでの農政の歪みがそのまま影響しているんです。

米に対してすごく手厚く政策誘導してきたこともあって、米を作ることが農家の安定的な収入であった。それがゆえに、農機具メーカーも米作りのための機械化を一生懸命やってきたわけですね。大型野菜の収穫に対してはもっと機械化が期待されます。

藤井 アメリカなどでは、レタスとかキャベツを収穫する機械がありますものね。ただ、作物じたいは年々強くなっていますよ。

私は出身が奄美大島なんですが、子どものころ、さとうきび畑が周りにいっぱいあったんですけれど、小学校2年生ぐらいのときの台風では、そのさとうきびが全部倒れたんです。

ちょうどその年ぐらいに新種の苗が出てきて、それを買うことができた畑は、翌年の台風のとき、きれいに四角く生き残って、そうでない畑は全部ばったり倒れていました。当時は、戦後から始まった品種改良の成果が毎年毎年出てくるような時期だったので。

河合 そういった台風などの天候不順に対応して野菜工場で作る、というような話もありますが、日本においては必要となるエネルギーが高くて難しいですね。

ならば、発想を変えてエネルギーが確保しやすい産油国に投資して野菜工場を建設し、日本に輸入するのはどうか。

日本のメーカーの技術力は素晴らしくて、葉物野菜の鮮度を落とさない特殊なラッピングフィルムを作る技術や、温冷同時に運搬できる技術など、輸送にかんしてもどんどん進化しています。

スイカも先物取引の対象に

藤井 なんにしても、もっともっとお金が動いて欲しいですね。お金の流動性を高めて、新しい技術を他国に売っていくためのコストであったり、その時にかける保険であったり、そういうものをどんどん新しく作っていけるような体力が欲しいです。

これまであった保険に加えて、収入保険制度など新しい保険も出てきたようですが、農家の方たちが、先物の市場などにちゃんとアクセスすることによって、自分たちが出荷するものに対して、マーケットバリューをきちんと認識して欲しいですね。

河合 そう、そこが圧倒的に欠けているんです。農水省の視察で各地に行くのですが、どこも一様に、「うちの農作物は安全でおいしいです」とおっしゃるんですね。

でも、安全でおいしいというのは当たり前のことであって、それだけではアピールポイントになりません。他の地域の農作物と何がどう違うのか、また、自分が作ったものを誰が食べているのかということを、もっともっと作る側が考える必要があります。

消費者のニーズをきちんと積み上げて、いろいろな農作物作りのチャレンジをして、付加価値を高めていくことです。

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