『未来の年表』シリーズの著者・河合雅司氏と、『ハロー・ワールド』の著者・藤井太洋氏(撮影/水野昭子)

自動運転は、本当に超高齢社会を迎えたこの国を救うのか

「未来」を展望する二人の読み方
ジャーナリスト・河合雅司氏の著書『未来の年表』『未来の年表2』(講談社現代新書)は、10年後、20年後の日本社会を克明に描き、累計73万部を突破する大ベストセラーとなっている。一方、作家・藤井太洋氏が近未来を描いた小説『ハロー・ワールド』(10月16日刊行)は、アマゾン、ドローン、ウーバーカーなどITまわりのガジェットが多数登場し、スパイ小説の面白さに満ちている。ともに「未来」を展望する二人が、今後の日本の姿を語り合った。

車間距離5センチで時速200キロの車が連なる

河合 それぞれの著書で同じ「未来」を語ってはいますが、アプローチがまったく違うんですね。人口の未来予測というものは大きくは外れません。

今年生まれた子どもは、これだけ豊かな社会で大きな災害がなければ、ほぼ100パーセント、5年後に5歳になります。そういう意味では『未来の年表』『未来の年表2』では、希望的な観測や空想、意気込みを排除して「未来」を書いているわけです。

一方、テクノロジーの未来予測というのは、「新たな技術」を見てみたいという人々の期待の大きさも手伝って、開発者の意気込みが入りがちです。

しかし、テクノロジーというのは、技術が研究室で確立されてから実用化段階を経て、多くの人たちが安価で気軽に使えるレベルに達するまで、どうしてもタイムラグがあります

たとえば、先日、AIを活用した「タクシーの配車支援システム」の実証実験が始まりましたが、それが今後、どんなサービスになっていくのか、そのテクノロジーがどれぐらい社会問題を解決するツールになっていくのかはまだ分かりません。

これを人口減少問題の解決策として織り込んでいくには、慎重な判断が必要なんです。

藤井 私はSF小説を書いているので、未来予測まがいのことをやっているわけですけれど、基本的にSF小説の未来予測って当たらないので割り引いて聞いて欲しいところです。

ですが、確信を持って言えることもあります。たとえば、自動運転でいうと、今のタクシーを置き換える形にはならないでしょう

藤井氏はもとはITエンジニア。主人公の文椎には自身が投影されている

河合 そうなんですか、やっぱり。

藤井 完全な自動運転が実現したら、車は必要な場所にやってきて、人が降りたら車は充電ステーションまで勝手に走り去っていく、で、また必要な時間になったら戻ってくる、ということが実現する。それはタクシーではないですし、今の乗用車とも違います。

河合 違いますよね、コンセプトが現在のタクシーが持つ利便性とはまるで違う。

藤井 あと、渋滞が相当解消されるんですね。10台連なっていても20台連なっていても、電車のように同時にブレーキが作動されるので、ポンピングで遅延していくことがないですから。

河合 合流などもスムーズにいきますよね。

藤井 はい、車間距離5センチで時速200キロで走る、というようなことがおそらく常態化します。自動運転する車だけが使えるレーンというものが生まれると思います。

河合 そうすると、無人車ではなく、人が運転している車にそのようなテクノロジーを組み合わせた車でいいのではないかと思いますね。

藤井 段階的には、そういう車とそうではない車が混じり合うと思います。アメリカには、渋滞緩和のためのカープールレーンというのがあって、私が初めてアメリカに行ったときには同乗者が2人以上乗っている車だけが走れる優先レーンだったんですが、このあいだ行ったら電気自動車はOKになっていました。

おそらく、自動運転車が出てくると自動運転車はOKになるわけですね、人間よりも燃費を無駄に使いませんから。そうやって徐々にテクノロジーを積んだ車が増えていって、それこそ統計的に燃料の消費量も減っていく。

『ハロー・ワールド』藤井太洋 10月16日発売
価格:本体1500円(税別)

80歳以上の高齢者を想定しているか?

河合 国交省が悩んでいるのは、人間が運転する車と自動運転車との混在期をどうするのかということです。

私は過渡期は、自動運転の車しか走ってはいけない特区のようなエリアを定めるのが現実的かと思います。エリア外に出掛けるときには、人間が運転する車に乗り換えるようにするとか。

藤井 現在のテスラ車がそうですが、車のハンドルに手をかけている、つまり人が責任を持っている状態であれば特区の外を走っても良く、ハンドルから手を離して良いのは特区とか高速道路でクルージングしている時だけ、おそらくそういう形になるでしょう。

河合 自分で運転できない高齢者が増えるから、それを機械にやってもらう、というのとは違う話になってしまいますよね。

自分で運転できる人の選択肢が増えるという話であって、高齢者の一人暮らしでバス路線もないところでの移動手段として、という話には、まだならないですね。

藤井 もちろんそうですね。

河合 そうなると、高齢化社会のニーズに合っているのかという話になるわけです。ここから先、納税者の数も減っていき、社会保障費の伸びは抑えられない状況で、どのテクノロジーを何の社会課題のために開発していくのかということを、もっと考えなければいけない時代になっているのだと思います。

この自動運転の車の話にしても、大規模な社会基盤の整備が必要で、莫大な公的投資、民間投資をしないとできない部分がありますから、そう簡単な話ではない。

藤井 車にかんしては、自動車会社にインフラを負って欲しいところです。今、自動車会社は国が作った道路というインフラにフリーライド(タダ乗り)して成り立っていますから。