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日本の水の安全を測定「金魚」の恐るべき潜在能力

ちょっと可哀想な気もするが…

意外な現場で使われている

愛らしい見た目に、どこか郷愁を漂わせる魚、金魚。日本に初めてやって来たのは、室町時代のことで、当初はその美しさから富の象徴として、貴族などの一部の富裕層に珍重されていた。

その後、江戸時代に入ると市井でも金魚が売られるようになり、金魚の養殖が全国的に普及。瞬く間に金魚ブームが起こった。

そして現在、金魚は日本で再び密かなブームとなっている。品種改良の発展で、金魚の模様や色も多様化。水族館展示やアート利用、金魚カフェなど、今や夏祭りの露店のみならず、至る所で金魚を見ることができる。

一方で、金魚は意外な場所でも活躍している。それが、「浄水場」だ。

我々が日常生活で使う水道水は、川や湖から取りこんだ水や地下水などを浄化・消毒してつくられている。この時、水の中に水銀などの重金属や農薬といった、人間の体に害を及ぼす物質が含まれていないか、検査をする必要がある。

 

その検査項目は約200。実に厳しい水質検査だが、これに金魚が利用されているのだ。

前近代的に思えるが、これは「バイオアッセイ」と呼ばれる、世界規模で採用されている科学的方法。

具体的には、浄水場に取り入れる水で金魚を飼育、その動きを監視して、万が一暴れるなどの異常が見られれば取水を停止し、検査を行う。金魚を使うのは、水の変化を感じやすい性質を持っているため。また、飼育のしやすさや生命力の強さから、24時間365日連続して監視するのに向いているからだという。

ちなみに全国の浄水場では、金魚以外にも様々な生き物が水の監視に使われている。魚ではコイやフナ、ニジマスが代表的。ここ最近では、イガイという貝の殻の開き方を見て、水の中に毒物が含まれていないか確認するといったユニークな手法も登場しているという。

金魚ブームが起こった江戸時代、幕府には「膳奉行」なる将軍の食事の毒見を行う役職があった。それから400年後の今、金魚が我々の毒見役をしている。不思議な縁だが、金魚に感謝したい。(栗)

『週刊現代』2018年10月13・20日号より