カープ芸人と話した「今年の広島、MVPは誰?」

いろんな名前があがるけど

一流の証

“カープ芸人”として知られるザ・ギースの尾関高文さんと会食をした時のことです。3連覇を達成した今シーズンの広島カープのMVPは誰か、という話になり、尾関さんはキャッチャーの曾澤翼をあげました。

「今年のMVPは會澤さんを推したいですね」

規定打席数に到達していない曾澤選手の名前をあげるとは……。“カープ芸人”の中でも、独自のポジションを確立している尾関さんならではの視点です。

 

10月1日現在、曾澤選手は102試合に出場し、打率3割6厘、13本塁打、41打点と好成績を残しています。これだけ打てば、狙われます。死球数14は、広島のキャッチャーとしては史上最多です。

5月1日、マツダスタジアムでの巨人戦では2打席連続でぶつけられました。ぶつけたのはともに山口俊投手。しかも初球です。これで冷静でいろ、という方が無理でしょう。

実は2人の間には因縁がありました。山口投手が横浜DeNAに在籍していた2012年8月、曾澤選手は顔面に死球を受け、鼻骨を折られているのです。この日はDeNAが勝ったものの球団の判断でヒーローインタビューは取りやめになりました。DeNAの中畑清監督(当時)は「1日も早く曾澤君の元気な姿を見たい」と沈痛な面持ちで語ったものです。

「打てるキャッチャーはぶつけられるものなんや。一流の証だよ」。ヤクルト監督時代の野村克也さんは古田敦也さんがぶつけられるたびに、そう慰めていました。

古田さんが立派だったのは、ぶつけられてもぶつけられても、ひるむことなく内角攻めを続けたことです。現役時代、“のび太君”の愛称で親しまれた古田さんですが、内実は闘争心のかたまりのような男だったのです。

曾澤選手も現役時代の古田さん同様、ぶつけられてもぶつけられても内角攻めをやめませんでした。だから、またぶつけられる、という繰り返しだったのです。

曾澤選手が台頭するまで、広島で“打てるキャッチャー”と言えば西山秀二さんくらいのものでした。球団史上、規定打席に達して3割を打ったキャッチャーは西山さんだけです。1996年、打率3割1分4厘でセ・リーグ打撃ベストテンの8位に入っています。