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部下のやる気をあげられない管理職はムダ…!横浜ゴム会長の経営哲学

大塚英樹の「成功するトップの覚悟」①
ジャーナリスト・大塚英樹氏は、長年にわたり企業経営の最前線で「社長」という存在をウォッチしてきた。その中でいま、大きな変化が起きていることを感じている。

世上よくいわれるビジネスモデルや経営上の話ではなく、もっと根本的に、社長つまりリーダーの「確信」と「覚悟」というものが問われる場面が増えてきた、と痛感している。企業リーダーの「覚悟」は「確信」が前提となり、「確信」があるから「覚悟」することができる。

どんなによい商品、よいビジネスを展開していても、社長の覚悟のない企業は発展・成長しないし、今は好調でも、やがてすぐ衰退への道をたどっていくことになる。

携帯電話の世界で日本勢を蹴散らした韓国のサムソン電子は、アップルを追随して世界首位を狙っていたが、最近の中国市場では価格競争力に勝る現地勢におされてシェアが急速に低下し、足元が揺らいでいるという。このことは昨今のビジネスの厳しい現実を示す典型例だろう。

大塚氏は近著『確信と覚悟の経営 ーー社長の成功戦略を解明する』で、16人の日本を代表する企業トップにその「確信」と「覚悟」を聞いた。短期連載でお送りする。第一回は、横浜ゴムの南雲忠信会長に迫る。

ブリヂストンとの差を新人時代に意識

私は、現在を「カオス(混沌)の時代」、言い換えれば、先の見えない「危機の時代」と捉え、その中で経営者自身がいかに危機を克服し、持続的成長を実現しているかに焦点を当てて取材を重ねている。成功する経営者は好不況、成果の良し悪しにもかかわらず、常に危機感を抱いている。

それはもちろん、目先の業績の良し悪しというような小さなものではない。IT、AI(人工頭脳)、ビッグデータ、そしてサイバー空間のプラットホームを押さえた巨人GAFA(ガーファ:グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の出現……。根本的な産業構造の大転換に放り込まれ、答えがない中で、次なるビジネススタンダードでは自社の存在が根本から危うくなる可能性を間近に感じての危機感だ。10年後、自社が存続するためには何が必要か。見つめるのはただその一点だ。  

南雲忠信も同様、2004年に社長就任以来、危機感を抱き続けている。それはビジョンや自分の思いを頻繁にブログと社内報で全従業員に伝えると同時に、毎月実施する全課長職との昼食会や各事業所の社員との対話会などでも熱く語り続けていることからもうかがえる。

そもそも一連の経営改革自体が危機感からきている。代表例が2006年からスタートした「2017年度に売上高1兆円、営業利益1000億円を目指す」12年計画だ。

 

「危機感は新人の頃から持っていた。僕が入社した頃はブリヂストンとの差は今ほど大きくなかった。『頑張れば追いつけるんじゃないですか。このままのやり方でいいんですか』と新年会などの宴席で訴えると、部長や役員は『バカなこと言っているんじゃない。敵は相当先を行っているんだから』とあきらめムードだ。

これでは会社はよくならないと思っていた。現在の長期計画は社員に緊張感を持たせるためでもあるんです」