熊本の祭りで馬イジメ…深刻な虐待問題から考える「近代と伝統」

100年前から議論されていたが…
岡本 亮輔 プロフィール

1960年代には、英国で、日本では犬が虐待されているという報道が繰り返された。内容は、日本人は犬を食べる、日本人は犬を撲殺するといった検討はずれのものだが、英国では日本製品の不買運動にまで行き着く。

1970年代に入ると、シドニーの日本料理店で伊勢海老を鉄板焼きにしたことが非人道的だと批判を集め、ロンドンの日本料理店でスッポンを調理した調理師と店長が罰金刑となり、店には嫌がらせの電話がかかるようになってしまう。

後者については、英国虐待防止協会のメンバー2人が身分を明かさずに来店してスッポンを注文し、わざわざ厨房で調理法を見届けた後に身分を明かして裁判所に告発した。

このメンバーによれば、スッポンにはエビやカニとは違って中枢神経があり、熱湯に入れるのは極めて残虐な行為だと批判しているが、そうすると国は異なるとはいえ、シドニーの伊勢海老の件はどうなるのか。

〔PHOTO〕iStock

動物愛護の名を借りた異文化排撃のように見える。ロンドンでは、のちに毛皮取り扱い店が放火されるようになるが、明らかに行き過ぎた行動だ。

また先月後半から、フランスでは、完全菜食主義者である急進的ビーガンによって、精肉店が襲撃されている。

夜中に投石されたり、「動物への弾圧をやめろ」という落書きをされている。日中は日中で、ビーガンたちは子豚の死骸を持ってデモ行進をする。彼らが着ているTシャツには「肉屋は職業ではない」と書かれている。もはや職業差別ではないだろうか。

 

どの線までならやっていいのか…

今回のような明らかな虐待や暴力は論外として、伝統行事や異文化には確かに違和感を覚えるものもある。

祭についていえば、危険が排除される現代社会だからこそ、祭礼の非日常的な危険性が魅力的に見えるのも事実だ。

岸和田だんじり祭で、仮にだんじりが軽車両ということで標識前でいちいち一時停止していたら、祭として成立しないだろう(祭の時には道路の特別使用許可をとっていると思われるが)。

しかし、それでは祭を盛り上げるために動物を興奮させるにどの線までならやっていいのか、だんじりを引くスピードはどれくらいまでなら良いのか、あるいは海外の過激な動物愛護団体から攻撃されるイルカ漁はやめるべきなのか、いずれも一概には決められないのである。