秋葉原に「ネット右翼の街」というイメージを植え付けたのは誰か

ネット右翼十五年史【9】
古谷 経衡 プロフィール

自民党関係者が語る「J-NSC」の内実

2010年6月9日に結成された「J-NSC」、つまり「自民党ネットサポーターズクラブ」の存在がそれだ。この組織は読んで字のごとく、インターネットで無料の会員登録を行い、様々な自民党の活動をボランティアで支える有志のグループである。

自民党公式サイトより

「J-NSC」発足から3年が経った2013年1月、第二次安倍内閣が誕生した直後の活気ある自民党本部を私は訪ねた。この時、幸いにも取材に応じた自民党本部の某広報関係者は、この「J-NSC」について概ね次のように語った。

「麻生内閣時代、『漢字が読めない』とかの瑣末な理由で、(麻生)総理に対する大手マスメディアからのバッシングが強まっている、と感じるネットユーザーが非常に多かったんですね。そして、ネット上に熱狂的な麻生ファンが増えるに従って、『俺達の麻生をメディアからの攻撃から守りたい』といった声が、自民党本部に届くようになっていたのです。それが『J-NSC』誕生の切っ掛けです。

(J-NSCは)インターネットを中心に、自民党員(有料)になるとまでは行かないけれども、自民党を応援したいという、幅広い支持者を対象とした組織です。インターネットの入会フォームから誰でも入れる無料会員を基本とし、ボランティアで活動いただいています。

オフ会と称して各地で集会や年に一回の総会を行う他、ネット勉強会や国会議員と直接触れ合う企画などを精力的に行っています。会員は、東京や大阪といった、大都市部に住む、比較的若い層が中心でしょうか。

自民党といえば、西日本や北陸といった、どちらかと言えば非大都市圏や地方に根強い地盤があるとのイメージがあるかもしれません。しかしインターネットで自民党を支持するサポーターたちは、そういった旧来的の支持基盤とは無関係に、人口比に比例するかのように大都市部に集中しています。

J-NSCの平均年齢は40歳、いわゆるアラフォーというやつです。男女比はほぼ2対1で、職業的には学生、会社員、主婦、自営業者など千差万別。平均年齢40歳というと、ちょっと高いと思うかもしれませんが、自民党にとってこれは画期的なことでした。これまでの自民党の政治集会などにいらっしゃるのは、申し訳ないですがほとんどが男性の高年齢層ばかりで、40歳前後の若い支持者は本当に珍しい。あとは、若い女性が沢山入ってきてくれたことも新鮮でした」

「J-NSC」は、やはり麻生太郎という個性に惹かれ集まった、インターネット上の「声」が実体として具現化したものが始まりだったといえるだろう。

「オタク」ではない安倍晋三まで…

2012年9月26日には、谷垣禎一総裁の任期満了に伴う自民党総裁選が行われ、第一次投票で石破茂に僅差で敗れた安倍晋三であったが、決選投票では石破を逆転し総裁の座を獲得した。その勢いで同12月16日、第46回衆院選で安倍自民が圧勝、第二次安倍政権が誕生した過程は書くまでもない。

この9月の総裁選挙でも、安倍晋三と麻生太郎の二人は、やはり麻生太郎自身の自民党総裁選挙の時と同じく、秋葉原を街頭演説会の舞台に選んでいる。この時は勿論、麻生は支援に回り安倍が総裁候補である。総裁選を6日前に控えた2012年9月20日、秋葉原でこの両者は街頭演説、万雷の拍手で迎えられた。

 

〈漫画やアニメ好きで知られる自民党の麻生太郎元首相が二十日夕、サブカルチャーのメッカ、東京・秋葉原の街頭で総裁選候補の安倍晋三元首相の応援演説を 行った。約5000人とされる聴衆を前に「ツイッターやフェイスブックで安倍さんの話やあなたの感想を全国に伝えてほしい」と、流行の通信手段で支援の輪を広げるよう呼び掛けた。〉(2012.9.21 時事ドットコム)

さらに野田佳彦による衆院解散を受けて、同12月15日の選挙戦最終日には、再びこの両者は最終演説の地に秋葉原を選択した。この街頭演説も相当な盛り上がりであり、当時の様子は次のように伝えられる。

〈多くの党が乱立した異例の選挙戦は十五日、最終日を迎えた。自民党の安倍晋三総裁(58)は、東京・JR秋葉原駅前で、麻生太郎元首相(72)とともに、最後の街頭演説に立ち、「もう民主党政権はスリーアウト。チェンジです」と野球に例えて民主党を批判した。

若者を中心に大勢の聴衆が集結。アキバで無類の人気を誇る麻生元首相が登場すると、「麻生コール」が。さらに安倍総裁が姿を見せると、「安倍晋三コール」が巻き起こり、まるでライブ会場のような盛り上がりを見せた。安倍氏は、民主党政権での失政を交えながら景気対策、外交対策、そして教育問題への取り組みなどを語り、「新しい日本を作ろう」と政権奪回を訴えた。〉(2012.12.16 デイリースポーツ)

地元の警視庁万世橋警察によると、当日の聴衆は4000名を数えたというが、現場の写真からは、警察発表を上回る数の人間がひしめいていたとの印象を受ける。

正確な人数の推測は兎も角、極めて興味深いのは、自民党が再び政権を奪取するターニングポイントとなった9月20日の総裁選、更に12月15日の衆院選の2回とも、麻生と安倍がまるでセットのように揃って秋葉原に登場している点だ。

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