なぜ自民党は秋葉原を「選挙必勝の聖地」と崇めるようになったか

ネット右翼十五年史【8】
古谷 経衡 プロフィール

ふくらむネガティブ・イメージ

とりわけ2000年に発生した「西鉄バスジャック事件」は、2ちゃんねるのイメージをネガティブな方向に決定づけたものとして著名であろう。

2000年5月3日、西日本鉄道の佐賀市発福岡市行き高速バス車内で起きた、少年によるバスジャックという凶行は、死者1名負傷者2名を出す惨事となった。その際に少年が、犯行前に「ネオむぎ茶」というハンドルネームで2ちゃんねるに犯行予告と思しき書き込みを行なっていたことが大々的に報じられた。

 

「ネオむぎ茶事件」とも呼ばれるこの衝撃的な事件は、1999年開設の2ちゃんねるがまだ草創期に過ぎなかった当時、一般世論にその名前を知らしめた大きな転換点であったと同時に、その後永らく2ちゃんねるが持つことになる「犯罪予告の舞台」「犯罪者もしくはその予備軍の温床」といったネガティブ・イメージを固定化するのに寄与した、分水嶺的犯罪として記憶されよう。

当時の「2ちゃんねる」のトップ画像

実際、ゼロ年代中盤までに2ちゃんねる発の刑事事件はこれ以外にも数多く起こっている。

代表的なものでは西鉄事件の直後、2000年6月に私立大学生が千葉大学に対し脅迫をおこない威力業務妨害容疑で逮捕された事件、2000年12月に16歳の少年が犯行予告をしたうえで新宿駅で包丁を振り回し人質をとった「ラットキラー事件」、2002年に男が猫を虐待する様子を公開し、動物愛護法違反で逮捕された「ディルレ事件」、2003年にハンドルネーム「ごるごるもあ」が米軍基地の爆破を予告し脅迫の疑いで逮捕された「ごるごるもあ事件」など。

さらに2001年2月には、北海道の17歳の高校生が「ネオ麥酒」を名乗り、よさこいソーラン祭り爆破をほのめかす書き込みを2ちゃんねる上で行なったとして補導された。2003年3月には、こちらも模倣犯的ハンドルネームの「ネオ烏龍茶」なる24歳の青年が、小田急線爆破を予告する書込みをしたとして、警視庁に威力業務妨害容疑で逮捕されるという事件が起こっている。

西鉄バスジャック事件から3年余が経っていたにもかかわらず、次々と模倣犯が出現するあたり、如何に同事件の社会的影響力が大きかったかを逆説的に物語る事件群であったと言えよう。