米中貿易戦争はこのまま「解決の糸口がない冷戦」へ突入する予感

中国は我慢、米国強硬派は同床異夢
津上 俊哉 プロフィール

中国:冷静さを保てるか

中国側はどうなっているのだろう?

8月9日付け『人民日報』に「米国が引き起こそうとしている貿易戦争の本質は何か」という重要論説が掲載された。時期から見て8月初めから始まった北戴河会議の結果を踏まえたものと見られるが、主旨は案の定「抗戦論」だ。曰く、

「米国はライバル国のGDPが米国の2/3まで達すると、ライバルを潰しにかかる性癖があり、ドイツもソ連も日本もみなそうしてやられた、今度は中国が狙われる番が来たということだ。これは歴史的必然、永い戦いの始まりであり、中国は覚悟を決めて、決して屈せず、戦わなければならない。」

「米国の圧力に屈しないで踏ん張りとおす」方針が北戴河で長老たちにも承認されたのだと思う。

問題はどのように抵抗するかだ。米国高官が勝ち誇ったように、米中両国の輸入量は5170億ドル対1500億ドルと3倍以上の大差がある。米国側は今後なお2670億ドル増やして対中輸入全額を制裁対象にすることができるが、中国側は残り400億ドル分の報復余地しかない。

「対抗措置の釣り合いがとれない」と不安がる人は「関税措置で足らざる部分は他の手段で補ってでも、報復措置の質的均衡を図るべきだ」と主張する。

 

足らざる部分を補う方法は、3つ考えられる。しかし、どれも副作用が恐い。

1) 米国系外資企業(GM、Apple、McDonaldなど)に許認可や税制で嫌がらせをして締め上げる

副作用:大勢の中国人社員が職を失う、各国の外資企業が(外資いじめに恐れをなして)撤退する動きに拍車をかける

2) 米国企業が中国から輸入するしかない原料・素材・部品を輸出規制する

副作用:米国から同種の報復を受けると、中国は米国以上に打撃を受ける(例:ZTE社に対する半導体輸出禁止)

3) メディアを動員して米国製品・サービスのボイコット運動を起こす

副作用:煽動された民意が制御不能になって社会不安を招く、米系外資拠点や米国外交公館への狼藉に発展して国際非難を浴びる

もう1つの考え方は、「1~2年も経てば、米国経済が物価上昇や企業業績の悪化など保護主義の副作用に見舞われて、批判されたトランプは撤兵を余儀なくされるから、それを待てばよい」というものだ。制裁を受ける痛みは甚大だが、「屈しない、けど熱くもならない」姿勢だ。

後者の方が断然お薦めだが、ワシントンDCで会った中国人研究者は「中国がそんな理性を保てるか、自信がない」と言った。しかし、前者の道を選べば、先に待っているのは「泥仕合」だ。