米中貿易戦争はこのまま「解決の糸口がない冷戦」へ突入する予感

中国は我慢、米国強硬派は同床異夢
津上 俊哉 プロフィール

米国:対中強硬派は混成部隊

米国の「ポリシー・サークル」(政治・外交・経済などに関わるエスタブリッシュメントたちのサークル)は、トランプ政権が経済問題で中国にタフに当たることを、いまや超党派で支持しているという。

ワシントンDCで感じたのは、この「超党派」とは、似て非なる考え方の混合物だということだ。類型化すれば以下のような「冷戦派」、「自由貿易派」、「反貿易派」らが入り交じっている印象がある(筆者の想像で補充して類型化した部分を含む)。

【冷戦派】
主たる懸念:米国の覇権に挑戦する中国の台頭
顔ぶれ:米国の覇権維持、安全保障を重視するグループ

【自由貿易派】
主たる懸念:中国の貿易歪曲的な行動
顔ぶれ:ビジネス関係者、通商専門家

【反貿易派】
主たる懸念:雇用喪失、貿易赤字・グローバリゼーション
顔ぶれ:ピーター・ナバロやバーニー・サンダースらとその支持者

(サンダースは民主党左派。左右両派が「反貿易」で手を結んで行動する気配はまだないが、米国在住のコラムニスト冷泉彰彦氏は最近のニュースレターで「むしろ怖いのは、トランプ流の無茶な貿易戦争ではなく、今後政界の台風の目となっていく可能性のある「民主党のサンダース派」による、グローバル経済への否定です」と語っている)。

 

冷戦派と自由貿易派は自由貿易体制を支持する。中国の知財権盗取、技術移転強制、貿易歪曲的な産業政策などを問題視する点でも立場が似ている。伝統的な主流派は、この両派のどちらかが多いはずだ。アタマの中が2つの考えの「ごった煮」になっている人もいるだろう。

これに対して、反貿易派は自由貿易体制をそもそも否定する。「雇用を流失させ赤字を生む」からだ。

また、反貿易派は、中国だけでなく「同盟国であっても大幅な対米貿易黒字を記録する国は同罪だ」とみる。だから北米自由貿易協定(NAFTA)も見直すし、日本にも自動車の輸出自主規制を迫る。

これに対して、冷戦派や自由貿易派は「国際社会の圧力を中国に集中させるべき」であり、共闘すべき同盟国まで敵に回すトランプのやり方に批判的だ。

また、反貿易派の立場に立てば、企業が対中制裁を逃れるために第三国に生産を移す動き(迂回輸出)があれば、それにも課税すべしという立場に発展する可能性がある。反貿易派にとっては、どこから来ようと「輸入は悪」だから、そうすることが論理的帰結だが、この主張がまともに検討されると、ビジネス界はいよいよ逃げ場がなくなる。

自由貿易派は「中国が貿易歪曲的な行動を止めればよし」とするのに対して、冷戦派や反貿易派は、それぞれ「中国の台頭は許さない」「貿易赤字は認められない」という結果にこだわるので、「問題行動が止めばよし」では終わらない(具体的には「中国が『問題行動は止める』と表明しても信用できない」と言い続ける)。

しかし、それでは、目下の貿易戦争は「中国の譲歩を引き出すため」のものではなくなり、「交渉による解決」が成り立たなくなる。

米国では、以上のように似て非なる考え方が入り交じりながら、トランプの対中強硬路線を支えている印象だ。今後トランプは時々の情勢に応じて、それぞれの考え方の「非なる」部分を都合良くつまみ食いしていきそうな予感がする。