# 通商政策

日米交渉を「案外悪くない交渉だった」と見るべき理由

もちろん油断はできないが

一定の評価をすべきだ。が……

安倍晋三首相は米東部時間の先週水曜日午後(日本時間27日未明)、ニューヨーク市内で、トランプ米大統領と日米首脳会談を行い、2国間のモノの貿易などを対象にしたTAG(物品貿易協定)締結に向けた交渉を始めることで合意、その事実を共同声明にまとめて発表した。

会談の前に、日本から輸入する自動車・自動車部品に対する関税の上乗せをちらつかされ、中国やメキシコに続いて深刻な制裁を受けかねない状況を作られていただけに、安倍政権としては2国間協定の交渉入りという譲歩はやむを得なかったのだろう。

早期の米国のTPP(環太平洋経済連携協定)復帰は絶望的になったものの、共同声明をみると、日本の面子への配慮に映る部分も皆無ではない。この内容で11月に迫った米国議会の中間選挙に向けた実績作りに貢献したとトランプ大統領を満足させることができたのならば、その結果に一定の評価を与えるべきである。

 

しかし、トランプ大統領が率いる共和党がよほどの大敗し、同大統領が再来年の大統領選での再選を断念するようなことが起きない限り、中間選挙後にはより厳しい2国間交渉が待ち構えていることは明らかだ。

加えて、TAGという耳慣れない言葉を持ち出して、包括的なFTA(自由貿易協定)交渉ではないとの印象を与えようとした、安倍政権の情報操作も首を傾げざるを得ないことである。

直前の状況を振り返ると、トランプ政権は日米首脳会談の2日前の先週月曜日、約2000億ドル相当の中国製品に10%の追加関税を課す対中制裁関税の第3弾を発動したばかりだった。

8月には、メキシコとの北米自由貿易協定(北米自由貿易協定)見直し交渉で、輸入自動車の関税をゼロにする条件として、部品の域内調達比率引き上げ、賃金の高い工場での生産を義務付ける賃金条項の付与、輸入台数に関する年間240万台という数量規制の新設などを呑ませていた。

米国にとって、日本は中国、メキシコに次ぐ第3位の貿易赤字国だ。それゆえ、6月に一部適用除外となったとはいえ、3月から「安全保障上の脅威になる」として鉄鋼、アルミニウム製品に制裁関税を課されている。

政府や経済界は、米国の要求をこれ以上拒み続けると、自動車に対して通商拡大法232条に基づく25%の制裁関税上乗せ処分が課されかねないと焦りをみせていた。

そうした厳しい状況にもかかわらず、政府は日本側が少なくとも2つ大きな成果をあげたと主張している。

1つは、共同声明に、交渉中は「声明の精神に反する行動を取らない」との一文が明記されたことだ。茂木経済財政・再生大臣は、「米国が検討中の輸入自動車に対する25%の追加関税の賦課が交渉中に発動されることがないという意味だ」との解釈を示している。

もう一つが、日本の農産品の市場開放について、「過去のEPA(経済連携協定)で約束した譲許(筆者注:譲れること)内容が最大限」との「(日本)政府の立場を尊重する」との文言を盛り込んだことだ。これにより、離脱前の米国とTPP(環太平洋経済連携協定)で合意した以上の市場開放を行わないとの姿勢を堅持できるというのである。