「90%の確率で来る巨大地震」で生き残る行動、命を落とす選択

どんな準備をしていたかが生死を分ける
週刊現代 プロフィール

深夜から明け方
メガネがない、壊れた、何も見えない、何もできない

午前3時、夜明けにはまだ遠い深夜、住宅街を経験したことがないような激しい揺れが襲う。震度7の世界では、あらゆるものが「凶器」と化す。

洋服タンスは倒れ、ベランダの窓ガラスは割れてフローリングに散らばる。ポットや花瓶だけでなく、大型のテレビや壁に備え付けられたエアコンですら飛んでくるのだ。

夜中に大地震が起こったとき、あなたがいる確率がもっとも高い場所は、寝室だ。

'95年の阪神・淡路大震災は午前6時前に発生した未明の大地震だった。やはり寝室で家具の下敷きになり亡くなった人が多かったという。

「直下型地震の場合、揺れ始めから5秒で家屋が倒壊し、1階部分が潰れる可能性が高いですから、一軒家なら寝室は2階に設けておいたほうがいいです。

また理想を言えば、その寝室は何も置いていない部屋がいい。プレート型の微細な前震が来た場合、本震まで猶予があります。ほかの部屋にいたとしても、その猶予で『家庭内シェルター』として逃げ込むことができるからです」(立命館大学環太平洋文明研究センター教授の高橋学氏)

 

まだ暗い時間帯、あたり一帯が停電により「ブラックアウト」すれば、めちゃくちゃになった室内でなにがどこにあるかもわからなくなる。北海道の地震では、停電から復旧に1週間近くかかるところもあった。すぐに電気が戻ると期待してはいけない。

懐中電灯を非常袋に入れておいても、タンスがひっくり返り取り出せないかもしれない。

近眼や老眼の人にとっていざというとき、ないと本当に困るのがメガネだ。いつもは枕元に置いていたメガネが、落下物で使い物にならなくなっているおそれもある。

メガネがなければたとえ夜が明けても避難はずっと難しくなる。離れ離れになった家族の顔さえ見つけられない。

「メガネはケースに入れて、枕カバーの中にしまっておくと安心です。それでも不安な人は、念のために予備のメガネを非常袋に入れておくといい。

ちなみに、非常袋を寝室に置いている人が多いかと思いますが、いざというとき取りに戻る余裕がないかもしれませんので、玄関にもあると安心です」(防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏)

Photo by iStock

メガネと懐中電灯、どちらもすぐに見当たらなければ、せめてスマホを探し出せばライト代わりになる。避難所までたどり着ければ、メガネを貸し出してくれることも多い。

とにかく、停電した深夜に少しでも視界を確保する手段を準備しておいたほうがいい。

揺れているあいだはテーブルの下などに身を隠したほうがいいとされているが、最優先なのは「頭を守る」ことだ。特に天板が取り外し可能な机の場合、衝撃で外れる恐れもある。

寝室であれば枕や掛け布団を頭上に被せ、ほかの場所であれば落下物が比較的少ない玄関などで揺れが収まるのを待つ。

揺れが収まりはじめたら、次に考えるべきは逃げ道を確保すること。日本の住宅のドアは頑丈にできているがゆえ、建物が少しでもゆがむと開かなくなってしまうおそれがある。

これはトイレでも同じで、夜中用を足しに起き、そのまま閉じ込められるケースも考えられる。まずは扉を開け、「動線」を確保しよう。

家屋で被災した場合、たとえ深夜だったとしても、そこに長居するわけにはいかない。

一度ダメージを受けた柱は倒壊の危険が高く、住宅街であれば火の手が回り、延焼するかもしれない。できるかぎり公民館や小学校などの広域避難場所へ移動することを考えるべきだ。

前出・和田氏は避難時の注意についてこう言う。

「地震の際には『ガスの元栓を閉め、漏電火災を防ぐためブレーカーを落としましょう』とよく言われます。たしかに大切な判断ですが、都市ガスは震度5程度で自動停止します。火や電気の始末よりも、まず屋外への脱出を最優先しましょう」

視界、頭上、避難の動線。暗闇に襲い掛かる災害だからこそ、どれだけ事前の想定が行き届いているかが生死を分ける。