産業用ロボット大手のファナック(6954)といえば、日本を代表するグローバルトップ企業として知られる。
近年、需要が爆発している「ファクトリーオートメーション(工場自動化)」の分野でトップシェア製品を抱えて、世界中からその製品は引っ張りだこ。18年3月期決算では2296億円という巨額の営業利益を叩き出したばかりである。
山梨県に本社を置く「地方企業」ながら社員の平均年間給与が1347万円(41.5歳平均)という高給ぶりでも知られ、これからの日本経済を牽引する存在としてメディアで脚光を浴びててきた。
そんなファナックが、ここへきて一転、沈んでいる。
同社の株価を見ればそれは一目瞭然で、今年1月に3万3450円の高値をつけて以来、ズルズルと下落。
6月に2万3000円台を割ると、それ以降は株価が2万円割れの瀬戸際に追い込まれる日が出るほどに、「株価暴落」の危機に直面しているのだ。
ファナックはここ数年配当性向6割を維持するなど株主にも配慮してきただけに、これほどまでの株価暴落は想定外の事態。
マーケットに不安が広がるなか、背景として指摘され始めたのが「米中貿易戦争の激化」である。
ファナックの工作機械の「お得意様」は中国であったところ、その中国経済の先行き不透明感が高まってきたことで、ファナックの経営にも暗雲が立ち込めているというわけだ。
「中国での工場設備投資の減速懸念が高まっていることが、ファナックの経営への懸念材料として一気に浮上してきました」(財産ネット企業調査部長の藤本誠之氏)
実際、9月26日に日本工作機械工業会が発表した最新統計によれば、8月の中国向け工作機械受注額は前年同月比で約37%減。米中貿易摩擦の悪影響はすでにビジネスの現場に波及しており、ファナックもその直撃を受け始めている。
こうした事態を受けて、カリスマ経営者として知られるファナックの稲葉善治会長兼最高経営責任者は、「(米中貿易摩擦の影響で)受注に影響が出始めた」「気がかりだ」と苦しい胸の内を明かしている。
「9月半ばにはゴールドマン・サックスがファナックの投資判断を引き下げた。先行き不透明感が高まっています」(運用会社ファンドマネジャー)