無数の注射器、追う男…丸山ゴンザレスに危険が迫るスラム街潜入記

クレイジージャーニー裏日記⑫後編
丸山 ゴンザレス プロフィール

いつの日か、また

三人揃って急ぎ足で移動しながら、妙な気持ちの昂ぶりを感じていた。これほどわかりやすく襲撃された経験は久しぶりだったので、胸の奥から高まった感情が吹き出しそうになっていたのだ。

不謹慎かもしれないが「ついに来たぜ!」ぐらいの叫び声は挙げたくなっていた。しかし、通訳さんは「もうやだ」と言って、思いっきり顔を曇らせていた。ディレクターは言うまでもないだろう。

 

Canada realを1から6まで踏破した。その結果、なかなか見れない光景を目の当たりにして、おまけに蹴りまで見舞われた。近年経験したことのないテンションの高揚があったのは間違いない。だからといって、この町が気に入ったのかと言えば、それは違う。中途半端な取材をしてしまったことの後悔が残っていた。

あとでマドリードに戻って聞いたのだが、この場所でドラッグを買う際には、我々が襲われた通りを車で流して、途中から減速する。それを合図に連中がドラッグを売りに来るのだそうだ。慣れたタクシー運転手だと、Canada realをまわってマドリードに戻る「定額コース」もあるそうだ。

その筋には有名で、ここには国中のドラッグが集まってくるという。違法性の高い場所とは思っていたが、事前のリサーチが足りていなかった。ドラッグのディーラーでもある彼らが、外部の人間を排除したいと思っているのは当然だ。住人感情を図り間違えた。

完全に私のミスである。これまでに経験したスラム取材とは違う、問答無用で暴力も辞さないというところに、このコミュニティの特殊性をうかがい知ることができた。いずれ機会があれば、もう一度この町を取材してみたい。