「日本人は投資が嫌い」は本当か? この国のいびつな資産運用の秘密

なぜ投資スタイルが二極化したのか
マネー現代編集部 プロフィール

その結果、ある人は「投資はしない」と考えた。一方には、「どうせリスクをとるなら、うまくいった時のリターンが大きい方がいい」と考える人たちもいた。

こうして、国内の資産運用は、預貯金のみで運用する保守的なグループと、ボラティリティ(値動きの幅)が大きいFXや仮想通貨取引に参加する積極的なグループに二極化した。

経済成長に乗り、恩恵を分け合うという本来の投資の姿から遠ざかったのである。

 

気づけば米国型の社会になっていた

では、そのような状況の中で、我々はどのように投資と向き合って行けばよいのだろうか。

環境の面から見ると、近年の日本では転職が珍しくなくなり、かつての終身雇用制度が崩壊しつつある。今後の年金制度を疑問視する声もあり、預貯金だけでは老後が成り立たないと不安に感じている人もいる。

年金と終身雇用が「投資しなくてよい理由」であったとするならば、その姿勢も変えていかなければいけないだろう。

「少子高齢化の流れが止まらない限り、年金などの社会保障制度はますます不安定になっていくでしょう。年金には税金が投じられているため破綻する可能性は考えにくいですが、受給開始年齢が繰り下げられたり受給額が減ったりする可能性は十分考えられます」

「また現状、老後の生活費の支えとなっている退職金も、基本的な構造は年金と同じで、若い層が退職者層を支えています。社員の高齢化が進めば、自分たちが将来受け取る退職金の額も減るでしょう」

退職金に関しては、仮に大卒で企業に就職し、定年まで働いたとしても、1000万円くらいしか受け取れないのではないかという話もある。しかも、大卒・定年まで働くという条件を満たす人は労働者全体の中で圧倒的少数であり、条件がどれか欠ければ、退職金の額はさらに少なくなる。

そう考えると、もはや「嫌い」「怖い」といった感情で投資を遠ざけている場合ではないのかもしれない。

日本人はいま、欧米のような社会を生きている。投資をうまく使い、自分で自分の資産を作っていくことを大前提とする社会だ。

「データを見る限り、国と会社に期待するのは大きなリスクだと思います。労働環境や社会保障制度といったマクロ環境を見ると、今の日本は欧州を飛び越え、米国に近い状況です。そういう意識を持って投資と向き合い、活用していくことが大事です」

(10月18日公開の後編に続きます)

柴山 和久(しばやま かずひさ)
ウェルスナビ代表取締役CEO。東京大学法学部、ハーバード・ロースクール、INSEAD卒業。ニューヨーク州弁護士。日英の財務省で合計9年間、予算、税制、金融、国際交渉に参画する。その後、マッキンゼーでは、ウォール街に本拠を置く機関投資家を1年半サポートし、10兆円規模のリスク管理と資産運用に携わる。次世代の金融インフラを構築したいという想いから、2015年4月にウェルスナビを創業。