『おカネの教室』書影より
# 金銭教育

なぜ現役経済記者が、娘のために「おカネの小説」を書いたのか?

日本の「金銭教育」に足りないもの
現役経済記者が執筆した『おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密』という本をご存知だろうか。
著者の高井浩章氏が、もともと3人の娘たちのために「家庭内連載」していた物語をkindle化。それがプロの編集者の目にとまり、経済の仕組みがわかる青春小説として出版され、いま辛口のエコノミストや書店員たちから絶賛されているのだ。
なぜ、おカネのことを知り尽くした記者が、「物語」という形で我が子に金銭教育を始めたのか。高井氏がその理由を明かす。

日本の「金銭教育」は極めて貧弱

「お金について、子供にどう学ばせれば良いのか」

子供が一定の年齢になれば、多くの親の頭をよぎる問題だろう。

金銭教育は重要で避けて通るべきテーマではない。だが、お金はつかみどころがなく、きちんと伝えるのは容易ではない。おまけに日本の学校の金銭教育は極めて貧弱と来ている。娘が10歳になったとき、世のお父さん、お母さんたちと同じように、わたしもこの問題に向き合った。

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そして出した答えが「自分で物語を書いて読ませる」だった。

少々飛躍が過ぎた。順を追って説明しよう。

私は今年3月、『おカネの教室 僕らがおかしなクラブで学んだ秘密』という本を出版した。おかげさまで半年で7刷まで版を重ねている。この本は、作者本人が言うのもナンだが、「経済解説を軸に物語がすすむ青春小説」という変な本だ。

もとは我が家の家庭内で連載していたもので、1章書き上げるごとに娘に渡し、「早く続き書いてね」とせがまれるという他愛のないものだった。ちなみに私の本業は新聞記者で、株式や債券などのマーケットや国際ニュースなどを専門分野としている。今年46歳で、高校生、中学生、小学生の娘がいる。

風変わりな先生が男の子と女の子の2人だけが参加する「そろばん勘定クラブ」で、お金と経済について講義し、その中であれこれドラマが展開される――こんな筋立ての小説の連載が始まったのは2010年5月、長女が5年生になったころだった。本業が忙しくなると執筆ペースが落ちるので、赴任先のロンドンで書き上げるまでに7年もかかった。この内輪の読み物が、あれよあれよと書籍になったのだが、その辺りのいきさつは後ほど。

 

家庭内連載という妙なことを始めたのは、けっこうな時間をかけて本屋巡りしたのに、良いテキストが見つからなかったからだ。綺麗なレイアウトでポイントを押さえた本や、専門用語を噛み砕いた入門書はそれなりにある。やる気がある学習者には良い教材だ。だが、そもそも娘はお金の仕組みや経済に興味などないのだ。面白くなければ読んでくれない。

既存のテキストには「読み物として面白くない」というほかに、大きな欠落があった。「お金は怖いもの」という負の側面への目配りの弱さだ。