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EU離脱まで残り半年…イギリスはこうして「袋小路」に迷い込んだ

最悪のシナリオを回避するためには…

イギリスが欧州連合(EU)を離脱する来年3月29日まで半年に迫った。

イギリスとEUは「合意なき離脱」という最悪のシナリオへ備えつつ、交渉の落としどころを探っているのが現状だ。

「交渉は行き詰まっている」――メイ英首相が9月21日に出した緊急声明は市場を揺さぶった。

しかし、交渉の行方をめぐりイギリスとEUの双方から発せられるシグナルは今も、悲観論と楽観論が入り混じったものである。

交渉の現状と、離脱交渉の「出口」を展望してみたい。

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主戦場はイギリス国内にある

最初に指摘しておきたいのは、交渉はイギリスとEUの間で行われているものであるが、成否の鍵を握る主戦場はイギリス国内にあるということだ。

その構図は、「メイ政権vs保守党強硬離脱派+過激な英メディア」である。その事情は後で説明するが、メイ首相はこの闘いに勝たなければ、EU離脱(ブレグジット)を軟着陸させることはできない。

なぜなら、EUとの合意案(=国際条約)はイギリス議会での批准が必要であり、議会承認が望めない合意を結ぶことは新たな混迷の始まりでしかないからである。

メイ首相は、EUという「前門の虎」と国内事情という「後門の狼」に挟まれた状況と言えるだろう。

離脱交渉をめぐり高まる危機と混迷のムード。しかし、外交交渉の要諦は合意を達成するという相互の「政治的意思」である。

11月中旬を想定した交渉期限へのカウントダウンが始まる中、筆者には、ブレグジットを軟着陸へ導くという双方の意思は逆に強まっているように見える。

 

交渉はようやく本格化

イギリスとEUの間で緊張が一気に高まったのは、9月19、20日に開かれたオーストリア・ザルツブルグでのEU首脳会議を受けてのことだ。

メイ首相の離脱計画案に対し、EUのトゥスク大統領が「実行不可能だ」と門前払いするかのような姿勢を示したのである。

これを煽り立てたのがイギリスの保守系新聞(21日付報道)である。

メイ首相はEUに「侮辱された」(デーリー・テレグラフ紙)、EU首脳による「計算づくの侮辱」(デーリー・メール紙)などと国民の反EU感情を刺激し、メイ首相の交渉戦略、リーダーシップを貶める報じ方をしたのである。

求心力の低下を防ぎたいメイ首相は21日、急遽TV声明を発表し、断固とした口調で次のように語った。

「我々は国民投票の結果を尊重しないいかなる提案も拒否する。悪い合意なら、合意なしの離脱の方がましである」

「合意なき離脱」という脅しをチラつかせることで、自らの離脱計画案の再考をEU側に求めた訳である。

この姿勢に対し、強硬離脱派や保守系メディアは賛辞を惜しまず、「メイ首相 ブレグジットで逆襲」(大衆紙サン)などと喝采を送った。

これに慌てたのがトゥスク大統領で、すかさず声明を出し、「すべての人に望ましい妥協(合意)はまだ可能だと確信している」と表明する展開となった。

EU離脱交渉は、これまでのジャブの打ち合い(腹の探り合い)から、ようやく本格化するというところだろう。