大震災から7年半、事実やデータだけでは見えなかった「新しい復興」

なぜ「現場の男」は考え方を変えたのか
石戸 諭 プロフィール

中間・外部を大事にしないといけない

小松は科学的なデータを積み上げて反論しているうちに、あることに気がつく。福島の食をめぐる問題はすぐに二極化してしまうことだ。

安全か危険か、差別か差別ではないのか、根拠はあるかないか。関心がある人たちだけで議論が激化し、お互いに対話や歩み寄りはなく決して考えが交わらない人たちの声だけがぶつかる。彼らは考えを変えることはない。

小松の体験的な考察は、科学的な知見からも裏付けられる。人間はSNS上で異論や反論をぶつけられたとしても、意見を変化させないどころからより自分の考えに凝り固まっていく傾向がある(例えば日経サイエンス2017年7月号「ネットの共鳴箱効果」を参照)。

結果、何が起きるのか。その中間、あるいは外部にいる人の関心が一気に低下する。

「福島はめんどくさい」「語るとどちらからも反論されそうだ」「もう関わらないでおこう」――。

《科学的なデータは大事だし、これまで積み上がっているものを否定する気はない。福島についての悪質なデマや無理解、メディアの恣意的な情報発信について批判することも必要なことだとは思っている。

それと同時に、俺が中間・外部を大事にしないといけないと思ったのは、マーケティング的な理由もあるよ。福島産は嫌だっていう人も、関心はあるわけだから、どこかのタイミングで買ってくれるお客さんやファンになってくれるかもしれない。

中間にはもっとファンになってくれる人がいるかもしれない。俺はうみラボの調査には原発事故や福島産が不安だって人も乗せるようにしていた。彼らの考えも理解しないと、活動していても、賛同する人にしか届かないでしょ。

 

データは確かに正しいし、強い。でも、俺らの伝え方がまずければ自分たちが正しいっていうだけで終わってしまう。

大事なのは、考え方が違う人たちでも一緒に船に乗るし、いわきで楽しい体験とか美味しい体験をしてもらうことかなって思ってたんだよね。》